生き延びたのでビニャーレスに行く

2019年3月14日(木)
Cuba Havana 〜 Viñales
キューバ ハバナ 〜 ビニャーレス

キューバは人々の出勤がやけに早い。
店が開くのは対して早くないのに、朝5時前から道路の往来は激しくなった。

幹線道路の脇にあるバスケットコートのさらに脇にテントを張ってあったのたけど、6時過ぎには排気ガスでテント内の空気が息苦しくなるくらいに車が多く走り買っていた。

傾いたバスケットゴールと日の出

まだ遠くの空の色が変わり始めたくらいの中でテントを畳んだ。今日は夜露に濡れてない。

 

この世の終わりみたいなボロさ、爆音、廃棄をまき散らしたバスが通り過ぎたかと思えば、モダンなヒュンダイの乗用車がヒュン…と物音立てず脇を走り抜ける。

基本信号機なんてなくてみんな好き放題走り回り歩き回ってるんだけど、一本道で少しでも車の進行を妨げるとすぐにクラクションを鳴らされる。

うーん、メキシコより治安が良いって面はあって落ち着けるけど、あまり余ってマイナス点が多いなぁ。
とにかくインフラってものが崩壊しまくってて、チュニジアを思い出させる。

無数のうるさすぎるタクシーの客引き、
信じられないほどの排気ガス、
オンボロ車の騒音、
フリーWi-Fiがないこと、
買い物できる店がないこと、
トイレに便座もペーパーも無いのが普通なこと、
バスの説明書きやボードや路線図がないこと、
歩道が大地震の後並みにぐちゃぐちゃなこと、
野良犬・野良猫がワンサカいてそこら中が糞だらけなこと、
ゴミが散らばってて回収されず悪臭を放ってること、
水道が出ないこと、
水道水か飲めないこと…。

羅列するといくらでも出てくるな…。

ありがたいのは、ATMが存在すること。
調べたところによればクレジットカードのキャッシングが街中のATMで出来るということだが、はたして叔母たちに依頼していたカードの繰り上げ返済は功を奏しているのか…。

 

最寄りのATMにやってきた。

English…withdraw…200pesos…

「Take your cash!」

キターーーー!!

現金んんんんん!!!!!

ひゃあっほうううう金だ金だああああああ!!!!!!
フハハハハハハハハハ!!!!

これで生き延びられるぞおおおお!!!!

CUCの札束

ってか札束…なんで全部5ペソ札なの…。

 

近くの公園でWi-Fiを繋いですぐに叔母達へお礼を伝えた。日本は夜中か。

助かったあああああ!!!
ありがとうございました!!

 

うーむ、繰り上げ返済手数料、いくらかかったんだろう…
借りたお金を早く返すためにわざわざ手数料かかるって普通に考えればおかしいよね。
遅く返せば利息、早く返せば繰り上げ返済手数料、どう転んでもカード会社は儲かるってこった。

 

通学・通勤の人々と一緒に歩いて歩いて、
昨夜間違えてたどり着いたフェリー乗り場にやってきた。

これで再びハバナセントロへ戻る。1ペソ、つまり1ドル。

カラフルな街並み

明るい色のクラシックカー

朝からっつーか深夜からずっと我慢しっぱなしで腱鞘炎になりそうなケツヤク…もとい、括約筋を救うべく早急に厠を探さねばならない。

ボロい建物

朝の路地

昨日のバー、ART BARはまだ営業時間外か…
開いてる店が少なくて適当に中庭があって落ち着いてるカフェに入った。

誰も来ない。

「すみません、このメニュー持ってっても良いですか」

「…」

お喋りに夢中だった店員が冷たい無表情を一瞬向けて頷くだけ。

雰囲気悪ぃなぁ。

 

散々待って別のおじさん店員がやってきたのでアメリカンコーヒーを注文。1ペソ。
トイレを借りたら、当然のようにペーパーなし。くそッ。

手を洗おうとしたら水が出ない。
くそーーっ。

席に戻って出てきたコーヒーがマズイ!
くそーーーっ!!

トースト、卵、ハム、チーズ

一応頼んだ朝ごはん。
目玉焼きとトースト、そこにマーガリンとベーコンが少しだけ添えられたプレート。
3.40ペソ、380円くらい。
ミモザサラダとバターコーヒーの朝食が食べたいなぁ。清潔なやつ…。

朝食セット、同じプレートにミルクコーヒーが付いたセットは3.70ペソです、と説明しているのが聞こえたけど、俺は先にアメリカンを頼んでから朝食プレートを付けてしまったせいで4.60ペソ。
うーん…。

 

さて、重い胃を抱えながら頭を切り替える。

走りかう車

昨日の公園に来てネットに繋いだ。
今日、ビニャーレスってとこに移動する。

東西に細長いキューバの島の、西に位置する渓谷だ。

世界遺産に登録されているらしい。
ハバナからバスで片道4時間。
ツアーもいろいろあって、定番なのは乗馬体験と葉巻工場の見学だという。
ほう、乗馬、したいですな。
目的は美しい山の見える田舎町で寛ぐことだけど。

ツアーなんて慌ただしいのはお断り。
まだ日にちもあるし、自分で行こう。

ビニャーレス行きバスはViazulって会社で、中心部から離れているみたい。
Parque de Fraternidadっていう、この前寝転がってた公園の周りに路線バスがたくさん走りかってるので、少し聞き込み。

クラシックカーたち

空港から市内に来るときに乗ったP12番バスなら同じ方向だからと思い、綺麗なツアーバスの運転手に尋ねてみたのが当たりだった!

分かれ道まで乗せてってくれるとのこと。なんと50セント。安い。

 

約20分で分かれ道に着いたよ。
ここから10分ちょっと歩いて、動物園の端っこ、向かい側に発見。

広い道路とバスターミナル

バスターミナルの入り口

「ビニャーレス行きバスお願いします!」

「今日は14:00発だけだよ。それでいい?」

「モチのロンです!」

「どこから来たんだ?」

「ハポン!」

「おー、ハポン!」
日本人というとみんな決まって柔道か剣道のそぶりをする。この国は格闘技が好きなのかな?

ビニャーレス行きチケットは12ペソ、1220円くらい。

 

トイレは無料と思いきや、ここも有料だった。

トイレの水が流れないので、担当のお姉さんがバケツで流してくれるサービス付き。
イヤだわそんなん。昨日食べたものがバレちゃうじゃない。

さすがにそこまでされたら1ペソ支払いは仕方ない。たけぇけど。
毎回人の排泄物流す担当をわざわざ雇うくらいならトイレ直してくださいよ…。

 

併設のカフェテリアでコーヒー!1ペソ!

グーーンンン…

あ、停電。

「あら停電。仕方ないわね。はい、お代返すわ」

ちょ(笑)

ビールに変更。1.25ペソのババリア。このビール好き。

ババリアビール瓶

本を読んでると電源が復旧したようで、またエアコンの冷たい風が吹き出した。
コーヒーリベンジ。
うーん、マズイ。

 

本によると瞑想はミトコンドリアにも良いらしい。

瞑想の仕方はちゃんと学んだことがないから自己流だ。
魔術のメディテーションと、聞きかじったヴィパッサナー瞑想、それに禅の基本を混ぜ合わせたもの。
どうも心身の調子が優れないし、ちょっとやってみるか。

ハープの曲を聴きながら椅子に座ったまま30分ほど瞑想した。

色んなイメージが頭の中をめぐる。
水草の浮いた滝壺
マグマの流れる火山とジャングル青空の下のハイビスカス
雪の平原

心が落ち着いた。うん、時間もちょうどいい。

さぁ、バスに乗ろう。

 

あらゆるものがボロボロのこの町の中でもまともなのが長距離バス。
街中で見るバスもかなり綺麗だった。

大陸で見る長距離バスのようなきちんとしたバスに乗り込んだ。
アメリカのグレイハウンドよりずっとまともだ。

 

街中をゆっくり走っていく途中で、一瞬あの有名なチェゲバラの顔が書かれた壁を遠目に見た。

そのままクネクネのろのろとバスは進んで行き、郊外の幹線道路に出ると勢いが出た。
その割には遅いけど、おそらくこの国の最速がこのレベルなのだろう。

なんの味気も色気もないハイウェイをバスがひた走る。
森と農園が広がる土地の真ん中を、他のバスや黒煙を上げるクラシックカーと並んだり抜いたりしながら進んで行く。

信号があるわけでもないので、ただ坦々と進んで行く。
最初は田舎の景色に安堵したけど、数分で飽きた。

窓から見える海

海だ!

窓から見る山

山だ!ビニャーレスが近い

さて時と所が飛んで、ビニャーレスの町中にたどり着いた。
景色が山がちになって、そろそろかな、と思ってからさらに1時間以上かかったけれど、ようやく到着だ。

ハバナのような高い建物は完全になくなって、2階建て程度の建物が並ぶ目抜き通りとその周辺、といった具合の小さめの町だ。

地図上では結構デカい地方都市だけど、他の国やハバナと比べるとすっごい田舎。
どことなく八丈島を思い起こさせる空気感だ。

バスから降りた景色

バスを降りたけど、
特に何か説明とか分かりやすい目印があるわけでもない。

WiFiもない。

ひとまず住所と、あらかじめダウンロードしておいたこの一帯の地図をもとに、予約を取っていた宿を探す。
モロッコのような客引きはないから安心と言えば安心だが、こちらにあまり興味を持たれていないというのはなんとなく寂しさがある。

 

住宅地の路地を頑張って歩いて、この辺かな~と進んで行く。
道端の人に尋ねたら「あっちだよ」と教えてくれた。

あまりにも住宅地だし、どの家も同じにしか見えない。

 

さて、ようやく見つけた宿だけど、まぁなんというか、民家とほぼ変わらなかった。
エアビー的な。

太った奥さんがWelcome感を頑張って出しつつもてなしてくれたけど、なんとなく対応が雑なのは、観光ズレしてしまっているからだろうか。

宿の部屋の外観

さて、ここの宿のプランにくっついているのが、なんとプランテーション見学だ。

コーヒー農園、葉巻用のタバコ農園、バナナ農園などを宿と親戚が経営されているようだ。
荷物を置くとすぐに行きましょうと奥さんが案内してくれた。

あぜ道を歩く奥さん

なんかの花

宿から木々の間を歩いて数分、どことなく西部劇を彷彿とさせる木の小屋に着いた。

「この周りがそれぞれの農園よ。彼が紹介してくれるわ」

そういって紹介してくれたおじさんが、どんな作物を育てていて、どれくらいの広さなのかということを説明してくれた。

育てているのはタバコ、バナナ、コーヒー。
あまり明確にエリアを区切っているわけではなくて、同じ敷地内に適当に生やしているみたい。

バナナの木

コーヒーの収穫時期はもう少し先の様子で、実は緑色だった。
詳しい説明とかあるのかと思いきや特になし。

コーヒーチェリー、旅に出る前に一回東京コーヒーフェスティバルで見たことあるが、
ちゃんと地面に植えられている木を見るのはこれが初めてだ。

コーヒーの木とおじさん

緑色のコーヒーの実

なんかの木

タバコ台

「見てみな、こうやってタバコを巻くんだ」

と小屋のテーブルで朴葉や唐木の葉っぱのような大きなタバコの茶色い派をクルクル回して葉巻の形にしてくれる。

へー、マジで巻くだけなのか。
簡単そう。

「香りを嗅いでみな。良い質だろ?」
と嗅ぐ素振りをしてから手渡してくれた。

鼻に近づけてみたが、正直分からん…。枯れ葉の匂いとしか…。

仕方ないので適当にスマイルで応答。

「あとこれは手作りのロンだ。飲んでみな」

と、瓶に入った真っ黒な液体を小さなグラスに注いで手渡してくれた。
え、いいんですか!嬉し~。

クッと飲んでみると、蒸留度合が然程高くない、甘くて薫り高いラムの味がした。
マイヤーズみたいな強烈な感じじゃなく、どことなく果実酒みがある。
これは美味しい。

こちらの反応を満足そうにおじさんが見て笑う。
どこからともなく、若いギター弾きの青年が来てぽろぽろと練習し出した。
日が暮れていく。

テーブルの上の色々なもの

「タバコとロン、それぞれ売ってるから、欲しい量を教えてくれれば用意するよ」

おっと、営業が来ましたね。
俺はタバコは吸わないし、ラム酒はぶっちゃけ欲しいけど、残念ながら大瓶しかない。

もう少し小さいサイズがないか尋ねたけど、無いとのことだからあきらめざるを得なかった。
「蜂蜜もあるよ!いかが?」

う、うん…蜂蜜は好きだけどこれまた大瓶だし、すぐに消費できない重いものを持ち歩けない。
それに蜂蜜とかこの先どこかで国境を超えられない可能性もある。

まぁ、お金余りないし、ポジティブに受け取るとしよう。
おじちゃんは「まぁ仕方ないか」ってすんなり引き下がったもののやはり残念そうだった。

コーヒーは売ってなかった。
まぁキューバ来てから飲んでるコーヒー全部マズいからあまり買いたいとも思わないか…。

タバコの葉を干す小屋

さて、簡易的な農園ツアーを終えて宿に戻ってきたら別の白人のおじさんがいた。
背が高い中肉で髭を短く刈り込んだ人。ドイツ出身だそうだ。

「やぁ、君も宿泊かな?僕はステファン、隣の部屋だ。よろしくね」

 

紅白のテーブルクロスの上にカトラリーが並んでいる。

「夕飯出すから座っててちょうだい。」といって奥さんが隣の建屋から色々持ってきてくれた。

宿の豪勢な夕食

花柄に盛り付けられたサラダ

サラダ!
すげぇ、盛り付けが花だ(笑)

あと謎のポテチのような料理。
一見ポテチだけど、味がない。ちょっと固め。

手作りポテチ

面白い味だね~とステファンと一緒に食べる。

パラっとしたライスが皿いっぱい、なぜかバナナが添えられている。
それとは別にパパイヤと輪切りのパインが乗った大皿もある。

メインディッシュはなんと骨付きの鶏もも肉が1人1本!
なかなか豪華だ!!!

芋と鶏もも肉

これまでまともなものをキューバで食べてこられなかったからめちゃくちゃ嬉しい。
味付けはどれも超シンプルだ。ほぼ塩のみ。でも充分美味しい。

黒い豆のスープ

黒い豆のスープ。
なんだろう…、表現が難しい。

エンドウ豆を煮込みまくった感じかなぁ。

ヘルネケイットというよりはガンボの食感に近いけど、味は黒豆の方が近いかも。
味付けは、正直よく分からない。塩だけ?
豆の甘みはある。

食べてる少し先で奥さんが椅子に座ってタバコを吸っていて、たまに風向きで煙が漂ってくるのが死ぬほどウザイ。
どういうサービスだよ…。

どこからか、オアアアアアアアアアアアアアアっていう叫び声が聞こえてきた。

びくっとしてステファンと顔を見合わせると、奥さんが
「あぁ、隣の人よ、頭がおかしいの。気にしないで。」と手をヒラヒラした。

こ、こえー。

食べ終えたらデザート代わりにジュースが出てきた。
パパイヤのジュースらしい。
メキシコでも宿でちょくちょく出てくるやつ。優しい味で割と好き。

 

さて、食べ終える頃にはすっかり暗くなってしまっていた。

昨夜は睡眠時間が短かったのもあって結構疲れた。
長時間のバス移動って、座ってるだけなのになぜか疲れるよね。

 

ステファンは町に繰り出しに行くらしい。

見送ってから部屋に戻った。

いや~、腹が満たされた。
生き延びた実感に満たされる。

キャッシュが手に入ったとはいえ、無駄遣いは出来ない。
1ヶ月後にはまた上限に達してしまうからな。節約を意識しよう。

部屋でくつろいで、この日は終了。

ベッドが二つ並んだ部屋

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