Moi
早くも11月末。年の瀬も近い。
最近ハマってるTHE ALFEEが41年ぶり(!)に紅白歌合戦に出るとのことで、
気も早く大晦日が楽しみなロニーです。
さて早速本題。
情報伝達の過程では、多くの情報が失われます。
これは口頭でもそうですし、文章を経ればさらに顕著です。
基本的には、伝わった情報が意味を持ちます。
絞り込まれた、その一部の情報が人を動かします。
しかし伝わらなかった、欠落したその情報こそが、
より重要な意味を持つこともあります。
情報が欠落したが故に誤解が起きたり、
大事な情報が消えてしまったりするからです。
情報を発信する側は、
もし正確に全体像を伝えようと意図するならば、
欠落を防ぐような注意や工夫が必要です。
逆に、絞り込んだ一部の情報のみを伝えようと意図するならば、
こちらは受信側がその意図を汲み取る必要が生じます。
ここで特に問題が大きいのは、
受信側が「見えないものを見る必要がある」ことです。
これはとても難しいことです。
例えば僕たち夫婦間の普段の会話の中でも、
揉めてから「ちゃんと伝えれば良かった」と後から二人して反省することが、ままあります。
今回は、情報伝達の場で、
受け手が情報の欠落に備えるために何が出来るかについて書きます。
抽象化、絞り込み、切り抜き – 情報の欠落に備えるには
言語は抽象化の産物
まず必ず知っておくべきは、
「言語とは抽象化の産物」であることです。
例えば。
リンゴがあって、
それをAさんが指さしてBさんが見れば、
同じ特定のリンゴの情報が伝わります。
しかし言葉だけで「あそこにリンゴがある」と伝えても、
そのリンゴは具体的にどの辺にあるのか?
赤リンゴなのか青りんごなのか?
大きさはどの程度か?
味は、産地は、風合いは、香りは…
と、実物を見ないと分からない多くの情報が欠けてしまいます。
言葉であれば、声色、表情、身振りなどの「非言語情報」がまだ含まれていますが、
これが文字になると、更に多くの情報が失われます。
失われた情報は、受け手が想像して補うことになるので、ここにリスクが潜むわけですね。
このことを認識しておかないと、
「こう言ったからあの人はこう思っている」
「こういう記録が伝わっているからこれは事実である」
「この情報も大事なのに言及してないから本人はそのことについて知らない」
と短絡的に考えてしまい、ミスコミュニケーションが起こってしまいます。
情報が切り抜かれているケース
最近ではYouTubeでも「切り抜き動画」が流行っています。
娯楽程度であればそこまで大きな問題にはなりにくいですが、
これがメディアになると悪影響が大きい。
いわゆる「切り抜き報道」と呼ばれるやつです。
新聞やニュースでは5W1Hを正確に伝えることが意識されていますが、
それでも切り口や書き方・話し方によって印象が変わったりすることもあります。
つい先日、恩師からこんな連絡が来ました。
「(前略) スウェーデン、フィンランドでは第三次世界大戦に備えて物資の備蓄を!って政府が広報したってあったんだけど、何か知ってることってありますか?(後略)」
むむ、何やらきな臭い情報だぞ、と思い、まずは裏取り。
「フィンランド 備蓄」で検索してみると、以下のYahoo!ニュース記事が見つかりました。
「戦争に備えておむつや医薬品の蓄えを、スウェーデンとフィンランドが国民に冊子配布」
https://news.yahoo.co.jp/articles/2d8bd24cbae353ff074103ddb0d9c04070691139
検索に出てくる、アメリカ発のCNNも同じ見出しです。
この見出しだけ読むと、
ちょうど同じ11/19~11/20に報道されている、
アメリカによる、ウクライナが長距離地対地ミサイル(ATACMS)をロシア対抗へ使うことを許可したことに対してロシアが核指針を改定した旨のニュースが出回ったこともあり、
「遂に第三次世界大戦が始まった!」という印象を受けてしまいます。
しかし記事内容を読むと、印象は変わってきます。
今回は戦争への備えという点に重点を置いているのは事実ではあるものの、
この冊子自体は第5版目とのことで昔から出されていたものであることが分かるし、
フィンランド内におけるデジタルパンフレットでは自然災害なども対象になっていると書かれています。
一方、同じ情報を11/18に公開しているイギリス発のBBCでは、以下の見出しとなっています。
「北欧諸国、「戦争を生き延びる」ため国民にあらためて助言 世界情勢の変化受け」
https://www.bbc.com/japanese/articles/ced9ey13eglo
BBCの方がよりマイルドな切り口です。
落ち着いて情報を見れば、
「目前の戦争に備えろ!」というメッセージではないことが読み取れます。
こういった差は、特定のメディア発信者の主義・思想によって生じますし、
さらに利害関係などの立場も影響してきます。
スポンサーへの忖度や、国同士の関係性などが背景にあるからです。
メディアは出来るだけ多くの人に記事を読んでもらうことを目的としているため、
パッと目に入った瞬間に「これを読まなければ」と思わせるために、
意図的に欲望や危機感を煽るわけです。
また、同様の理由で、情報の切り抜きに悪意が混ざりこむこともあります。
かつての政治家による「貧乏人は麦を食え」発言が有名です。
僕の恩師が、フィンランドに多少の縁のある僕にこの質問をしてきたように、
ある気になる情報を得た場合は、
他の情報源を当たって真偽を確認して見たり、
他者の意見を聞いてみるのが有効です。
比較的情報がまとまっているニュース記事ですらこうなのですから、
文字数が少なくて、かつ情報発信の素人が書いているSNSなど酷いものです。
受け取った情報が切り抜かれている可能性を念頭に置き、
その情報を発信した意図など、周辺情報を同時に集める習慣は欠かせません。
ちなみに、先ほどの恩師からのメッセージも、僕が一部分を切り抜いています。
こうやって(前略)とか丁寧に書かれていることは少ないものです。
情報が絞り込まれているケース
発信する情報は、
ある特定のターゲットに向けて絞り込まれているのが通常です。
マスメディアはマス(大衆)に向けて書かれているため、
情報は割合、網羅されている傾向がありますが、
例えば営利目的であれば、マーケティングが間に挟まります。
購買に繋がるターゲットを特定して、そのターゲットに向けて情報量や切り口を最適化します。
男性誌は男性向け、女性誌は女性向けと言えば分かりやすいでしょうか。
あまりに多くの発信者が多いSNSでは、
投稿は埋もれてしまって誰にも見られません。
少しでも自分が伝えたいことがあるのであれば、
切り口を尖らせたり、自分の望むクライテリアを持つ受け手に対して書き方を変えます。
投稿に対してイイネやフォローが付けばそれがモチベーションになり、
以降の投稿では、
良いフィードバックがあった前の投稿に近しい特徴が、
自然と増えていくことでしょう。
こういった背景を知らないと、流れ弾を食らうことになりかねません。
基本的には、SNSや検索エンジンでは、
アルゴリズムによって、自分の性質に最も合った投稿が表示されます。
しかし普段SNSを見ない人、使わない人ほど、
そういったパーソナライズが働かないため、被弾する可能性が高いと考えられます。
著名人同士の会話に、自分が参加しているように勘違いして場違いなリプライをしてしまう。
就職希望者のプライベート投稿を採用側が見てしまう。
「忙しい」と断った誘いの日に別の人と遊びに行っているのを知ってしまう等々。
酷い場合にはパートナーの浮気が発覚することすらあるでしょう。
今見ている情報が、誰から誰に向けてのものなのかがクリアになれば、
こういったリスクを減らせるはずです。
情報が真実であっても、受け取るべきでない人が受け取ってしまうと事故になることもある。
受け手側がもし「本来自分が知るべきでない情報を知った」と気付けるのであれば、
そのことを冷静に受け止める力も、情報化社会の中では必要なのかもしれません。
情報が抽象化されているケース
僕が最も今課題に感じているのは、これ。
まずは全人類に、細谷功氏の『「具体⇄抽象」トレーニング / 思考力が飛躍的にアップする29問』を読んでもらいたいです。
中学2年生以上なら理解できる内容なので、出来れば授業で取り扱ってほしいくらい。
仕事においても、趣味でも、人間関係でも必要となる、
非常に重要なことが分かりやすく解説されています。
この本を読んでくれればいいので、
この項はここで解散!
…と言いたいところですが、それでは身も蓋もないのでもう少し。
なんらかの情報を抽象化するには、
その対象の特徴を抽出した上で、
余分な枝葉を捨てることが必要になります。
「マグロ」を「魚」というように抽象化するには、
マグロとサバとメダカなど、含まれるそれぞれの具体の特徴をそぎ落として初めて、
「魚」と一括できます。
では会話ではどうでしょう。
仮に「買い物行ってきて」と妻が夫に言ったとします。
この一言には、
「冷蔵庫などの備蓄を確認して。
献立と販売価格を考えて、今必要なものを買ってきて。
次の週末は外食するから沢山買いこまない方がいいかな。
献立は旬のものが食べたいな。
でも今は魚じゃなくて肉の気分。
肉は駅前のスーパーが今日は安い。
今日は早く寝たいから夕飯を早めに作る予定。
16時までに済ませて帰ってきてくれると助かる。」
のような具体的な情報が切り捨てられています。
この情報を、どこまで伝えるか。
もし夫が普段から買い物に行っていれば、ここまで具体的に伝える必要はありません。
いちいちこんな細かいことまで指示していたらいくら時間があっても足りないでしょう。
情報伝達では、言葉にせよ文章にせよ、
こういった多くの具体的な情報が欠落します。
X(旧Twitter)など、文字数制限が多いSNSもあります。
またLINE、Slack、Teamsのようなチャットツールでも、
一問一答になりがちなので情報量は少ないです。
日本伝統の俳句や短歌などは、まさにその粋。
クルタさんは、極端な「抽象」側の性格です。
常にすごく高い視点から物事を見て、具体的な説明を省いて話します。
一方僕は、かなり具体寄りです。
一から十まで順序立てて詳しく説明したい派。
このブログの記事を読めばわかると思います。
長いですよね。
抽象寄りの考え方をする人は、具体的で詳細な説明を回りくどく感じて嫌います。
具体寄りの人は、話を途中で遮られて結論を先回りされるととても不快に思います。
厄介なのは、ある特定のテーマにおいて、
抽象度の低い人は、高い人の考えが理解できないことです。
これを「マジックミラーの天井」と表現したりします。
一般社員は経営者の考えていることは分からないし、
車を買う人は売る人が持っている情報を持ち得ません。
しかしダニング・クルーガー効果によって、
抽象度の低い人であっても、
自分は抽象度が高いと錯覚してしまうバイアスから逃れられません。
相手の発した、一文程度の言葉。
抽象度の違う、具体寄りの人が、
この見えない「欠落した情報」を受け取るにはどうしたら良いのでしょうか。
正攻法では、追加で質問することです。
または関連情報を調べることです。
「何を買ってくればいいかな?」と聞けるのであれば聞くのが早いかもしれません。
ちなみに我が家では、クルタさんはこういった具体を嫌うので、
聞くと「自分で考えてくれ」と言われます。
その代わりこちらが自分でしっかり考えた内容に対しては、
もし至らない部分があっても文句は出ません。
よく上司とか先輩が「自分の頭で考えろ」とか「自分で調べろ」というのは、
こういった説明を省きたい意図と、
自分でゴールを定めて、必要な情報、やるべき行動を自分で考えて実行しろという意図があります。
自分よりも抽象度が高いと思われる相手に対して、
何らかの課題を出されたり、質問をしたいときなどは、
具体的なアクションではなく、
相手が求めるゴールや条件を聞くのが良いでしょう。
受け取った情報が、自分よりも抽象度が高い可能性があることを常に意識する必要がある、
ということになりますが、
これはつまり、自分が受け取った情報の完全性が100%ではない、ということを意味します。
これに対抗するには、
受け取った情報が全てではない、ということをまず念頭に置くこと。
さらに、自分はここまでしか知らないけど、
他の可能性がどの程度あるかをどのようにして確かめるか、という疑問を持つこと。
その疑問への答えとなるパーツを一つ一つ集めること。
無論、こういった考えを、全方位に向けて持つことはめちゃくちゃ大変なことです。
もし持ってる情報量や、考え方のひな型が多ければ、それだけ抽象度の高い視点に立てます。
しかし誰しもが異なる抽象度を持つので、抽象度の高低差は必ずと言っていいほど現れます。
これに対しては、
見えないものを見ようとして、望遠鏡のような、
よく見えるようにするツール(思考のフレームワーク)を学ぶのも手。
また事前に関連情報を集めておくのも一手。
しかしそういった人海戦術的なアプローチには限界があるので、
最終的には、
「この情報には、他の人には見えていて、自分に見えないものがある」と
真摯に受け止める気持ちを持ち続けることが、一番の対抗策なのだと思います。
これは具体的な解決方法ではないですが、この考え方を頭の片隅に置いて毎日コミュニケーションを取り、情報収集をすることが、自分の抽象度を上げるトレーニングとなることでしょう。
もっと抽象度を上げてスマートになりたい、と思ってる僕の率直な気持ちです。
(話長いですよね~。)
おわりに
さて、めちゃくちゃ長くなってしまいました。
話が長いのは、抽象度が低い証だそうです。
困っちゃいますね。
情報には、
切り取られていること、絞り込まれていること、抽象化されていることから、
情報の欠落が存在することをここまでで示しました。
それに対抗するには、
情報に欠落があることを認識し、
足りない情報を補う必要があることも書きました。
さらに本編では書きませんでしたが、
情報が書かれた、言われたという事実の裏には、
その内容以外に、その内容を発した理由が存在します。
加えて、
「その内容以外について言及されていない理由がある」
という反対の象限もあります。
この場でこういった声明が出たが、敢えて触れていない事実がある、
といったケースです。
見えない情報を扱うには、
想像力や、仮説を立てるスキルが求められるでしょう。
また心や頭に余裕がないときほど、こういった潜在的な情報が見過ごされます。
時間的、空間的、金銭的、健康的余裕などがあれば、
じっくり情報を受け取れるのかもしれません。
余裕を持ちたい。
最後に、僕のブログのターゲットについて付則しておきます。
僕は実名で書いていて、世界中に向けて公開しています。(執筆現在)
なので、僕のブログは、
家族、親戚、会社の同僚や上司、仕事上のお客さん、かつての恩師、友人、まったくの他人、
更には将来の自分や将来のコニー、マゴニーも読む可能性があります。
後で自分が読み返して、明らかに不適切な部分や、誤っている部分、読みにくい部分などは修正することもあります。
率直に書くように、誤解を招かないように、
そして誤った情報がないように気をつけていますが、
バグのないプログラムはないように、完璧な情報発信にはなりません。
もしコメント、メッセージがあれば、ありがたく受け付けますので、
ご指摘や感想などあれば気軽に下さい。
(万が一、誹謗中傷や荒らし、明らかなクソリプがあれば然るべき対処はします。)
では今回は以上!
モイモイ!
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