2019年2月5日(火)
USA Monument Valley 〜 Sedona
アメリカ モニュメントバレー 〜 セドナ
フカフカのベッドで目を覚まして、キッチンに行ってみれば、
クリームチーズのベーグルが用意されている。
コーヒーの香りが部屋に漂い、卵をフライパンで焼く音が心地いい。
そんな朝。
が、好きだけど、
背もたれを倒した助手席で寝袋にくるまって、寒さで震えながら目を開けたら、
モニュメントバレー。
ってのも、オツじゃないですか?
急いで服を着て車のドアを開けた。
すげーー!!!!!!
ファンタスティックうううううう!!!
完全にロープレの世界!!
世界を仲間と出会いながら冒険をする、夢の中の世界。
絶対あの後ろにドラゴンとかいるわ!!
車から徒歩10秒の位置。
朝日のゴールデンタイムを収めたのであろう先着組が良いスポットに三脚を立てて、すでにホクホク顔だ。
俺は強い陽光に起こされたのでシャッターチャンスは逃したけど、まぁ別にって感じです。
朝日好きだけど。
あまりの雄大さに絶句してると近くから日本語が聞こえた。
見やれば、男性2人が小さな簡易三脚で自撮りをしようと四苦八苦してる。
「こんにちはー!日本人ですか?写真、良ければ撮りますよー!」
「あ、どーも、ホントですか?…じゃあお願いしちゃおうかな」
お二人は1週間休暇を取ってグランドキャニオン周辺の観光に来たのだそう。
セドナ、アンテロープキャニオン、モニュメントバレー、サウスリムってコースみたい。
アンテロープについて尋ねたら、なんとツアー代、1人50ドル以上かかったそう。
たっけ!
ネットの2年前くらいの情報ではナバホ税込みで28ドルとかだったのに。
「なかなか来れないんで、高いけど思いきって行ってきましたよ〜。値上がりしたんですかね」
とのこと。
今回俺は28ドルは高いからスキップしたけど、50ドルじゃまったく行く気湧かないなぁ。
お二人を見送ってからビジターセンターでトイレを借りた。
ビジターセンターにあったお土産のこの花瓶?つぼ?めっちゃカッコいい。
ちょっとだけ歩いた。
ヤベー。
馬に走らせてきてこんな荒野で焚き火しながらソーセージとか焼きてー。
さて、今日中にセドナまで行かねば。
車内で軽く朝ごはん。
絶景の中、昨日来た道を車を走らせる。
夜はなんも見えないから分かんなかったけど、やはりすごい。
ドライブもこれだけ景色がいいと楽しい。
周りに車もなにもないただの一本道が地平線の果ての山に吸い込まれるように伸びている。
時速140キロとか出しても、もはやなんの危険もない。
すげー開放感。
砂漠の砂が風に吹かれてアスファルトの上を赤い靄のようにうねっている。
カエンタって町のマックでちょっとコーヒー休憩。
晴空の下、乾いた草と石だけの荒野が続いていた。
セドナの手前にある山が見えると、
その上にゴツい雲が乗っかっていて、遠目にも雪が降っているのがわかる。
砂漠と雪って同時にあり得るのだから面白い。
空に続いてるかと思えそうな登り斜面道路で雲に突っ込んだ。
小粒のあられがバラバラとフロントガラスを打ち付ける。
これくらいならスリップすることもなかろう…
山の中にある町、フラグスタッフ(Flagstaff)で一旦給油した。
その横の駐車場に車を止めて昼飯も。
アボカドサラダとクリームチーズを乗せたパン。
窓の外は雨、みぞれ、あられ、雪がコロコロと姿を変えていて、賑やかだ。
こんな天気の悪い山の中だけど、町の規模はまぁまぁ大きいようだ。
大きなショッピングモールが隣に見えた。
こんなとこにも人がたくさん住んでいて、多くの人は生まれてから死ぬまで、この町で暮らすんだなぁ。
フラグスタッフからセドナまでは地図上ではすぐ近くだったのだけど、それは半分間違っていた。
蛇腹の峠道がその間にあった。
運転免許の合宿以来だなぁ、車で峠越え。
雪がバシバシと窓を白める。
この見通しではとてもスピードは出せない。
どんどん道幅が狭くなっていって、ついに山道に入った。
制限速度15マイルという超低速指定のキツい峠を下る。
運転している自分でも軽く酔うほどのキツい山道だ。
何回蛇行するのか、気が遠くなりそう。
ようやく直線道路が戻ってきたところで雪も止み、同時に急に凄まじい景色が現れた。
モニュメントバレーのような、上が平の山がドカドカとそびえている。
違うのは、その山肌に緑を携えている点だ。
フラグスタッフからの雨水を受け取ってのものかもしれない。
オーククリークっていう川があるみたいで、この渓谷の川沿いには沢山のホテルやアクティビティロッジが立っていた。
マジですげーよー。
美しすぎるよおお。
車止めたいー!!
でもこの山道も往来は多く、意外に車が走りかってるから安全に脇に止めるのが難しい。
それにちょっとした停車スペースも雨や雪のせいか深い水たまりになってしまってて、
とても入っていきたいと思えない。
なかなか停車できるポイントが見つからないいいいい。
ようやく前後に車もいなくなったいいポイントを見つけて適当に横道に入ったら、
まさかの一方通行、しかも有料道路みたい。
うがあああまたこのパターン!!!
ど、どど、、童貞ちゃうわじゃなくてどうしよう!
と思ったら、ゲートには誰もいなかった。
ありょ。なんだこれは。
ラッキー。
通り抜けてすぐにUターン。
急いで写真を撮った。
木が邪魔だけど、スゴさは伝わるのでは!!
すげー。
セドナがどんなとこかわからんけど、この景色を見にここを通る価値はある!
セドナはすぐ下だった。
降り山道の途中からそのまま町になってる感じ。
ウエスタンなデザインのお店が並んでいてショッピングが楽しそうだ。
街中の駐車場は6:00〜18:00まで有料らしい。
ここセドナでは少しトレッキングしたいと考えていたからそのままトレイルヘッド(入り口)に向かった。
駐車場に止めた。
セドナはネイティブアメリカンの聖地とされている。
このセドナだけでも10以上のあらゆる部族が住んでいたそうで、
どれだけみんなに神聖視されていたかが分かる。
聖地と呼ばれるのにも訳がある。
調べてみたら、ボルテックスといって、電磁力が高い磁場が集中しているのだそう。
そこでは木が捻れて育つという奇怪な現象が見られるほか、リラックス効果などもあるみたい。
そういった点に魅了されて、全米からスピリチュアルに傾倒した連中がこぞってパワーをもらいにくるそうだ。
そのボルテックスとやらはこのセドナに4箇所まとまっていて、
1つが今着いたここ、カテドラルロックという岩山だ。
他のは街の中心部にあるエアポートメサ、北側にあるボイントンロック、南側に位置するベルロック。
どこでもいいから一箇所山登れたらいいな、と思って選んだのがここカテドラルロックってところ。
このカテドラルロックのふもとにはオーククリークの川が流れる、これまた人気のヒーリングスポットがある。
ヒーリングってのは、自称ヒーラーの恣意的解釈の押し付けによる洗脳効果で自己治癒力を高めるものだと解釈している。
ちょっとそこの点に関しては一家言あって話が長くなってしまうので飛ばすとして、
このヒーリングスポットには水の妖精がいるとの伝承があるのが俺を惹きつけた理由だ。
水の妖精の住処はどんなところじゃろ?
おっと、道を間違えたようだ。
この辺はお屋敷が立ち並んでいる、プライベートな住宅エリアだった。
かつてはネイティブアメリカンの土地を押しのけて私有地化したんだろうなぁなんて無粋なことを考えつつ引き返す。
正規のトレッキングルートを見つけて入っていった。
ルートが途中で別れる。
そのまままっすぐ岩山に登っていくか、
妖精の住処であるレッドロッククロッシングってポイントに行く道。
まずはレッドロッククロッシングのほうにしてみますか。
ミルフィーユのような、段になっている岩棚の上をさくさくと歩いていく。
背の低いサボテンや、枯れた不思議な植物があちこちにある。
この不思議な木、なんだか見覚えあるなー。
記憶をたどって思い出したのは、ドリームシアターの7枚めのスタジオアルバム、トレインオブソートの歌詞カードにあった写真だ。
全然違うかも知んないけど、なんとなく俺の記憶のイメージと重なった。
それだけでもなんかワクワクしてくる。
岩山からチョロチョロと流れてくる雪解け水を渡ったりしながら下っていき、川沿いに出た。
早歩きで徒歩20分かそこらだ。
気軽に来られる距離。
特になにかのモニュメントとか、不思議現象があるわけじゃない。
小さなビーチ。
フラグスタッフの山から流れてきたと思われる茶色い水がドドドと激しく流れていて、
沐浴なんかしたらソッコーでサカナの餌になりそう。
砂浜にも岩の隙間にも、白い泡が立っている。
この現象って洗剤が流れ込んでできるケースのほかに、
地中のメタンガスなどが影響しているケースなど色々あるんだったよな。
どちらにしても、あまり触れたいとは思えない…。
小雨がパラついて、冷たい風がびゅうと吹き抜ける。
寒いけど、靴下も脱いで、穏やかな部分に足をつけた。
冷水が足を冷やして、凍りを血管に詰め込んでいるかのようだ。
冷たっ!つんめったっ!!!
凍え死ぬ!
こんなん俺が妖精になるわ!
童貞ちゃうわ!
タオルで足を拭いて、赤い岩の上に立った。
大きく、深呼吸。
川の濁流の轟音。
山から吹き降りてくる強い風が耳元でゴオオと別の低音を響かせる。
荒々しい自然の姿だけれど、なぜか頭に浮かぶのはハープの音色だった。
水の妖精は冬眠中のようだ。
来た道を戻って、再び分かれ道の看板に来た。
カテドラルロックのトレイルには、石を針金でまとめたバレルが道先案内になっている。
目でたどっていくと、結構険しい岩肌を上に導くように続いている。
…行けるとこまで行ってみるか。
分厚い雲が太陽を覆い隠し、強風に乗って霧雨が身体を湿らせていく。
2人の女性が慎重に降りてくるのとすれ違って挨拶。
「雨が降ってきてるからゆっくりできなかったわ。気をつけてね!」
と声をかけてくれた。
岩の質のおかげか、濡れてても全然滑らない。
険しい部分には、意図的に削ったような、手がかり足がかりにちょうどいい窪みがある。
天気のいい日であれば、少し気をつける程度で誰でも登れそうだ。
最高な景色。
バレルはまだ上に続いている。
…もう少し行ってみようか。
一段と険しい岩山の中心部の麓近くまできて、これ以上は断念した。
いったいどこまでまだ続いているんだろう…
誰かが賽の河原のように石を積んでいる。
山に来ると必ずあるよね(^_^)
ここの一番上に積んだのは、俺です。
雄大で、とてつもなくダイナミックな、力強い景色を眺めまわした。
砂漠らしい、赤土の岩と、そこにたくましく茂っているグリーン。
そこにさらに家を建てまくってる人間の生活。
不思議な調和だ。
先入観を植え付けられてしまったことは否めないが、どことなくグラストンベリーを思い出させる空気がある。
降りたくない、と抵抗する気持ちを押さえつけて、引き返した。
暗くなる前に降り切らないと、死ねる。
山は下り道の方が危ないのだ。
変に見栄を張らず、かがんで、尻をついて、しっかり手で支えながら下山していった。
無事駐車場まで戻ってこられた。
よっしゃ!
時刻は日の入り間近。
もう1箇所くらい行きたかったけど、これは無理っぽい。
街の中心部に行って、開いていたカフェに入った。
地図上の、評価の高いコーヒーショップはみんな早々とクローズしてしまっていて、
Black Cow Cafeってとこに入った。
大好きなクランブルのピーチバージョンがあった。
名前はpeech crumbになってる。
crumbは屑とか、パンの内側の部分とかを指す単語。
crumbleは動詞で、崩すとか崩れる。
きっと同じ食べ物だろう。
むー!これは試したい!
TECOLOTE(大学の時のバイト先)のアップルクランブル、美味しかったなー!
恩師でもあるオーナーのタツヤさんがアメリカに行った時にクランブルのことを知ってそれを店のメニューに入れたとのエピソードを聞いていたから、そのクランブルを本場アメリカで食べられるのは嬉しい!
ラテと一緒に。
温めてもらったピーチクラムにフォークを差し込んだ。
柔らかく煮込んで、水分が飛んで甘さが凝縮したコンポートに、ザックリと焼き上げた、硬めのクランブル生地がたっぷりと乗っている。
その両者の境目はネットリとした食感になって、それがまたたまらない!
上部はオーブンで焼けてカリカリ、
真ん中はピーチの水分を吸ってネットリ、
ピーチはトロッとしたジューシーさ。
この食感のバリエーションがとても楽しいのだ。
ピーチクラムを楽しみながらも、やるべき事がある。
フリーWi-Fiを繋いで、ラスベガスから次のヒューストンまでの移動を考えた。
あとアメリカ内で行きたいのはヒューストンとニューオーリンズだ。
結構遠い。
ほぼ大陸横断に等しい。
ラスベガスから繋いでいくなら、アルバカーキ、オクラホマシティ、メンフィス、そこから南に行ってニューオーリンズ。
再び西に向かって、ヒューストン、サンアントニオからのメキシコ入りになる。
でも正直かなり日程が遅れてて、急ぐ必要がある。
特に興味もないオクラホマとか寄ってもすることないよなぁ。
都会も大自然ももう楽しんだ。
早く先に進みたい。
ってことでお馴染みグレイハウンドバスでヒューストンまでの直行便を検索してみた。
最安値で219ドル。
所要時間、26時間。
なんと乗り換えが4回もある。
さすがに遠いなぁ。
試しに空路を調べてみた。
最安値が109ドル。
所要時間8時間。
乗り換えはロサンゼルスで1回。
圧倒的に早くて安い!!
追加荷物の料金を入れてもバスより安い。
バスより少し高くなったとしても、時間が早い。
欲を言えば陸路で行きたい。
その方が旅してる実感が強いから。
うーーーんんん。
選択。
…
しんどいのは構わない。
そっちの方が楽しかったりするし。
でも、バスの中で何もできず、丸一日潰して、ヘトヘトになって、お金も浪費するというのは、全然目標に合わない。
それが超ストレスになってしまう。
全く知らない町に降り立って、寝不足でぼーっとしながら朝日の荒野を見るのもいいけど。
お金と時間を節約して自分のやりたい勉強に当てたいというのが今の気持ち。
あー。
なんか分かってきたな、少し。
いろんな人の旅ブログを読んでると、やっぱり影響されてしまう。
俺もあんなカッコいい旅の仕方してみたいとか。
あんなエピソードが欲しいとか。
でもそれって真似にしかならないし、思い通りになんていくわけがない。
あの人はあの時あんな大冒険や感動的な出逢いがあったのに、
自分は何も一切起こらない、って悲観しても、ツマラナイだけだ。
俺が一番好きなのは、学ぶこと、知ること。
知識欲が一番の原動力。
人との出会いや困難への挑戦も楽しいけど、一番は知識欲。
そこが満たされないと、楽しさが半減なんだ。
だから俺は、無理して”旅らしく”しようとしないで、
俺のやり方で、俺が楽しいと思う方法で、旅すればいい。
早くて、Wi-Fiがあるのなら、それが今の俺の旅の仕方に合致する。
それがバスなら、どんなにハードなルートであっても、そっちを選ぶだろう。
飛行機のチケットを決済した。
カフェの閉店に合わせて店を出て、再び車に乗り込んだ。
雨が降ってる。
ここセドナで1泊したいところだけど、ここからラスベガスに帰るのには5時間くらいかかる。
返却予定時刻が12時だから、朝早く出ないといけない。
でも天気予報を見ると、フラグスタッフ周辺から雪が酷いらしく、
思い通りに帰れない可能性が出てくる。
どうせ今することもないから、行けるところまで進んでしまおう。
目標はウィリアムズだ。
峠に入ると雨はすぐに雹から雪に変わった。
暗闇、白い道路、左右の草木。
先を進んでいる車のテールライトがカーブの時にチラッと光る。
道路の車線が見えなくなるほどに雪が積もっている。
崖からダイブしないように、ガードレールに擦らないように、慎重にハンドルを裁く。
峠を越えてフラグスタッフの街に出る。
少し道を間違えて、ハイウェイに乗る入り口を通り過ぎてしまった。
あばばばばば(´Д` )
一通に従って住宅地に入って、うん、地図のこのルートならぐるっと回って戻って来れ、
ないいいいいいい!!!
雪のせいでタイヤが滑ってハンドルを右に左に頻繁に回すことになる。
で、住宅地の軽い上り坂で、完全に雪にハマった。
ブイイイイイイイン
虚しく空回りするタイヤ。
さ、サイアクだ(´Д` )
し、しめた、幸いバックはできるぞ。
後ろに下がって切り返してUターン。
また道を引き返した。
あっぶねー!!
無事ハイウェイに乗って、ウィリアムズへ向かった。
とはいえ、ハイウェイも雪がすごくて、
たくさんの大型トラックがソロソロと、時速20マイルくらいでゆっくり走ってる。
ぎえええ怖ええ(´Д` )
象の群れの中に迷い込んだ子豚みたいな感覚。
ちょっと操作をしくじったら滑って大型トレーラーにニャンまげすることになる。
神経を尖らせて走らせること3時間。
ニャンまげってなんだっけ…まぁいいや。
ようやくウィリアムズのインターチェンジを降りられた。
雪に飾られた、レトロさの残る小さな町。
歩いてる人も車もなく、家々の灯りが静かに歩道を照らしている。
フラッとバーやカフェに入れたら最高だな、と夢想しながら街を通り抜けて、
ハイウェイの反対側にある湖畔沿いの公園に入っていった。
純白の白い駐車場に車を滑り込ませてタイヤ痕のシュプールを描いた。
湖は見えないけど、近くにトイレや遊具があって公園なのがわかる。
車のエアコンの暖気が抜ける前に寝床を作った。
息を止めると静寂にこの場を支配される。
そこに風がゴオオンと車を揺らす。
この世に自分しかいないかのような、そんな感覚。
レンタカー旅最後の夜、これにて。
コメント