アヴァロンの入り口(後編) ~妖精に誘われて~

Moi!ロニーです。
こちら、グラストンベリ―でのブログの後編です。
ではどうぞ!

 

2018年12月18日(火)
UK-England Glastonbury
イギリス・イングランド グラストンベリー にて

さて、どうしようかな。
ここもWi-Fiは使えない。

少し本を読んで日記を書いたら窓の外が暗くなった。
会うのはまだ後。

20時に教会で待ち合わせだ。
暗くなった街を歩く。

あ、楽器屋がある。
よし、入ってみよう。
Natural Earthlingという店。

棚に並ぶシャーマンドラム

パーカッショニストとしての血が騒ぐ!

フレームドラム、シャーマンドラムがラックにいっぱい並んでいる。
ベルツリー、ウィンドチャイムもいろんな種類がぶら下がっている。
タブラやゴングドラムやジャンベも。

面白いほどに宗教系の楽器が揃ってる。
音楽は信仰と密接に関わっているもんな。
めちゃくちゃ欲しい。

バケツも楽しいけど、ちゃんとした楽器の方がきっとバスキングとしてはいいはず。
ホームレスやヒッピーの端くれとして見られるより、
旅のミュージシャンとして見られた方が稼ぎは上がるだろうし、
思うにエンターテイナーとして人が望むものもそちらにある。

しかし高い。

数万円、ここで費やすのはやはりリスキーだよな。
ましてやこれからアメリカ大陸に渡る。
盗難、紛失、破損の危険性がめちゃくちゃ高い。

すでにこの旅で幾度となく葛藤を繰り返してるけど、やっぱり今は楽器は買えない。

 

店員さん。
名前をMarek という。
ポーランドの移民だそう。

20代の頃にロンドンからヒッチハイクをしてここに立ち寄ったところ、
鳥肌が立つほどのインスピレーションを得てここに移り住むことを決めたのだと、教えてくれた。
なんと心躍るエピソードか。

きっとこの町にそんなパワーがあって人を引き寄せるんだろう。
そしてこの町に住む人にはその共通の心があるに違いない。

フクロウマグとハーブティ

ハーブティーをご馳走してくれたマレクにお礼を言って店を出た。

そのマレクがお勧めしてくれたお店に行ってみた。夕飯はここに決めた。
Reinbows End Cafe。
訳せば虹の麓のカフェ。

RAINBOWS END CAFEの入り口

ジャガイモのチーズ乗せ、サラダ付きを注文した。(£5.95)
コーヒーも。割と安い。(£1.95)

山盛りチーズのジャガイモ

固茹でのおっきなジャガイモにふんだんにチーズを乗せてオーブンでとろかしたものだ。
メルティングバターが体内に暖かさを届けてくれるかのよう。

塩気が薄いけど、ナチュラルな味わいが満足感をくれる。

ただ、このお店にもWi-Fiがない。
うむむ。
Wi-Fiがないのはかなり痛い。
雰囲気はいいんだけどな。

ショーケースに並ぶホールケーキ

見目面白いケーキが並んでいる。
食べてみたいけどネットがないのでは長い出来ない。

あと色んな店に入りすぎててお金がヤバい(;´Д`)

The Goddessのショーウィンドウ

あ、またGodessってやつの店がある。

ちょうどレインボーエンドカフェの斜め向かいにExcalibur Cafeって別のカフェがあった。

エクスカリバーといえばアーサー王が手に入れる聖剣ですよ。

確か昨日ここを通り過ぎた時に、Wi-Fiフリーの文字を見た気がしたぞ。
雨の降る通りを横断して入り口を見たら確かにそう書いてあった。
よっしゃ、ここにしよう。

パソコンを使ってる人もいる。

名前が「l do」っていうチャクラのお茶を頼んだ。(£3.50)

鉄瓶で入れたグリーンティーに、シナモンやオレンジピールを加えた、いわばMulled Tea。
アーモンドミルクが付いてきた。
うまそー!

鉄瓶

とはいえ、もう立て続けにお茶とコーヒーを飲んできてる…
そんなガブガブたくさん飲めない。

Wi-Fiを使わせてもらうための席代ですな。
味は美味しいです。

窓際の乾燥植物

お茶をさびちびとすすりながらブログを更新していく。

更新もかなり遅れてしまってるし、そもそも読んでくれてる人も大していない。
だからランキングは低くて、同期で旅人ブロガーでも俺のことを知ってる人なんてまずいないだろう。

俺が読んできた旅人たちの何人かは今でもブログを続けている。
世界一周からのカテゴリーから外れてしまっていても。

今のトップの人たちのブログもちらほら読むけど、
やっぱり自分が憧れて読んでた人たちのブログの方を熱入れて読んでしまうな。

ジーナリンはオーストラリアで水中カメラを買ったそう。
金丸さんに3代目トロールがやってきたそう。
Masatoさんは南極マラソンを終えて帰ってきたそう。
シミさんは運転免許を再取得するために猛練習中。

みんな自分の新しい旅をしている。
俺も自分の旅をするぞ。

 

約束の時間になって、St.Margret Chapelに行った。

チャペルはあまりに小さすぎる建物で、しかも入り口が道路と反対側に面していたから見つけにくかった。
中心部には近いんだけどな。

聞けば、グラストンベリーの中でも特に古い建物なんだそうだ。

 

裏手からチャペルの中に入った。
せいぜい10畳程度の広さ。

チャペルの祭壇

ここでクリスマスの聖歌の歌会が行われる。
プログラムにはTaizeって書かれているけど、どういう意味なのかな。

ケキーが見せてくれたオラクルって地方リーフレットのイベント欄に載ってたから合唱演奏会を想像していたけど、あれだ、ミサの時に、参加者が手渡された楽譜の簡単な歌を歌ったりするようなやつだ。

皿の上のロウソク

ケキーはまだ来ない。

年配のお爺さんに挨拶したら俺ももれなく楽譜を渡された。
う、歌えるかな。
完全に聴衆モードでいたわ。

参加者は全部で10人、白毛の綺麗なおばあちゃんがピアノを弾いて、みんなが歌を歌う。

歌い始めたあたりで仕事を終えたケキーも駆け足でやってきた。
お疲れさま!

パートごとに分かれて、カエルの歌のように小説をズラして同時に歌うってタイプが多い。
輪唱ってやつ。

パッヘルベルのカノンのメロディをアレルヤアレルヤって単語だけで合わせたり。
どの曲も、せいぜい8〜16小説くらいのめちゃくちゃ簡単なやつだ。

最初はメロディが分からないけど、覚えてくると音の響きあいとかボリュームのコントロールとかが分かってきて楽しい。

約1時間、8曲くらいやって終わった。

これはほんと楽しいなぁ。
みなさん、ありがとうございましたー!

この練習は二週に1回やっていて、次が1月1日らしい。

キリスト教系の催しだから、多分探せば日本でもこういったやつあるんじゃないかな。
みんな優しくて穏やかでいい人だし、居心地のいい空間だった。

 

ケキーと歩いて、ケキーの友達の家に寄った。
なんと、ケキーはやらないきゃいけない作業がたくさんあるそうで、
夜中までかかってしまうから、ケキーの友人宅に俺をお邪魔させてもらえないか尋ねに来たそう。

えっ!
ちょ、ちょっと話が違う(´Д` )
俺はケキーの寝顔を見たかったのに…

もとい、他の人の紹介で全く知らん人の家に泊まるのは少し抵抗あるんですが。さすがに。

だって紹介された方は友達の頼みだから仕方なく引き受けるかもしれんけど、
気乗りしないことだってあるやん。
ノルウェーでガスステーションヒッチハイクしてたときにも感じたこの気まずさ。

玄関で友人らに軽く挨拶。
実際彼らも都合悪いみたい。

庭でテント張るならいいよ、と言ってくれたけど、
その玄関先は狭くてモノがゴロゴロしてて、更に雨でドロドロ。
お世辞にもテントを張れるコンディションとはいえない。

結局また昨日と同じ状態になってしまった。
再び宿なし。

風は収まってるけど、今晩のニュースが分からんな。
それなら、まぁ昨日と同じかな。

日が越えるくらいまでバーで時間を潰して、昨日と同じところにテント張るか。
なんてツラツラ考えていると、

「うーーーん…、騒がしいのと散らかってるのを気にしなければ、
この後の作業の進捗次第だけど、やっぱ泊めてあげられるかも。
少し遅い時間になると思うけど。また連絡するよ」
わお。

正直もう、雨風がしのげて暖かければ、なんでもいいです!(´Д` )
寝させてもらるなら玄関でも!
なんなら階段でも眠れる!

少し友人らとお喋りしたあとにまた昨日のキングアーサーパブに向かった。
ケキーと一緒に。

あれ、やることあるんじゃなかったっけ。

「コメディやってるって!」
へ?コメディ?

ケキーについてパブの奥に行ってみると、
ホール席の奥にガラス戸があって、その向こうにステージ付きの小ホールがあった。

なんだこりゃ!
ライブできんじゃん!

で、そのステージには髪の毛とヒゲの長い、
ウォーキング・デッドのジーザスみたいな青年が1人立って何か話してる。
なるほど、漫談か!

代金を払うわけでもなく、手にスタンプを押してもらって席に着いた。

英語だけど、なかなか聞き取りも理解も難しくて半分くらいしか理解できない。

「俺はクランプスだ。昔は活躍してけど今はサンタクロースに役目を奪われてしまってやることがないんだよな。暇だし、だれか仲間でも連れてくるか」
って言って、ほかに3人くらい個性的なのがまたステージに出てくる。

確かクランプスってのはドイツやオランダの伝統的なクリスマスの怪物だったな。

フィンランドのヨウルプッキやスウェーデンのユールトムテンの原型だから、
サンタクロースの原型のひとつとも言える。

ステージの上に立つ4人の青年

4人の役割は以下の通り。

真面目で冷静なクランプス。
いつも怒っててなにかを破壊しようとしてる氷の王(多分ゲームオブスローンズの敵のやつ)。
イタズラばかりで自由奔放なクリスマスエルフ。
いつも呆れててため息ついて不満げなグリーンマン(?)。

キャラクター分けがうまい4人のアドリブのドタバタ劇だった。

フロアのお客さんとの絡みもあるから、
内容について行けてない俺としては「そこのお兄さん!」なんて当てられやしないかとヒヤヒヤしながら見ていた。

ケキーは頭だけ見てから家の片付けと仕事を終わらせないとと家に帰った。
また後で連絡してくれるとのこと。

なんだこの不思議展開。わくわく。

ダラダラとした劇だったけど、最後にはなぜかクイーンのボヘミアンラプソディーを流してみんなで大合唱というエンディングになって盛り上がって終わった。

おんぶして並ぶ4人の青年

ミュージックビデオの4人の顔が並んでるのを再現しようとしてる図。

まぁ、ウン、プロじゃないし、こんなもんだよね(笑)

バーに戻ってビール「キングアーサー」を頼んだ。
いえーい1人でかんぱーい。
ケキーはお酒とか飲むのかな。

テーブルの上のエール

1人で飲んでたら、おー、ロニー!と声をかけられた。

「あー、マーティン!」
昨日会って寝床を教えてくれたマーティン。
今日も来てたんだ!

「昨日は風が強くて大変だったろう!眠れたかい?」

「テントのカバーを吹き飛ばされたりしたけど、結果的にはバッチリ寝られたよ!ありがとーう!!」

「いや、申し訳なかった。もう少し離れたところに、もう一箇所キャンプが出来そうな場所があってね。
昨日教えたところだと、木の葉がもう落ちてただろう?
もうひとつの方は枝葉がたくさん残ってるから雨を凌ぐのに良かったと後から気づいてね。」

いえいえ、トンデモないです!

昨日、ペイガニズムに興味があるってことを伝えてたこともあって、
ちょっとオカルト系の話で盛り上がった。

マーティンはクリスチャンでもペイガンでもない。
そのマーティンが面白い経験を話してくれた。

「私はキャラバンに住んでいるのだがね、
一度窓から外を見ていたときに、変な飛行機雲を見て、外に出たんだ。
すると、三角形をした黒い不思議な物体が飛んでたんだ。
いや、飛んでると表現するのも違う気がするな。
普通、物体はスーって、こう滑らかに移動するもんだろ?
その三角は、カクカクっと、こう断続的に移動していたんだ。
ここにあったものが、次の瞬間には少し前のこの位置にある。ワープを繰り返してるようにだ。
これは凄いぞと思った瞬間に、その三角は私の頭をかすめてヒュン!!と飛んで来たんだ。
あれは小さかったね。
いや、仰天したよ。さっきまで遠くの空に見ていたものが、急に真上を取りすぎたんだぞ?
誰かに話しても頭がおかしいと思われるだけだから自分の心に秘めておいたことなんだ。
今はビールを何倍も飲んじゃってるからファッキンクレイジーだけど、そのときはもちろんシラフさ!」

マーティンがとっておきの宝物を見せてくれるかのように、ちょっと声を潜めながら教えてくれた。

「ここグラストンベリーはレイラインの上にある。
クリスチャンにとっても、スピリチュアルなことが好きな連中にとっても、ここは聖地だ。
不思議なものを呼び寄せるなにかがあるんだろうね」

うひゃー、ネットや本で聞くような話を実体験した人から聞けるとは!

世界の魔法を巡る旅。
そんなテーマも最初は考えていた。
でも俺は他にもいろんな興味があって、それ一つに絞ることは出来ない。

旅のテーマを完全に決めることが出来ない分、その土地その土地で別の楽しみ方が出来ればいい。

このイギリスでは魔術に関わるポイントを巡る予定している。

ハリーポッターロケ地巡りをしてファンタジーを存分に楽しむのだ。

ここグラストンベリーは、アヴァロンの入り口であるという説の記事を読んで興味を惹かれてやってきたけど、俺も見えない力に導かれてやってきたのかもしれないな。

魔法もファンタジーも夢だ。
夢が人に希望を与え、未来を生きる活力となる。
楽しい夢を見よう。
それが豊かな人生を形作っていくんだ。

 

ケキーの家に来た。

ちょっと中心部から離れていて歩いた。
聞いた住所ではここのマンションのはず。
目印となる青い物置小屋もある。

鳴ったのかどうかもわからないインターホンを鳴らして恐る恐る待っているとケキーの声がした。

「来たね!3階なんだ。上がってきて!」
階段を上がっていく。

日本とはやや違うけど近代的で、ちょっと古びた、そんなマンションの中。

一番上の階に着くと、扉の隙間から顔を出したケキーが「いらっしゃい、こっちだよ」と招き入れてくれた。
薄暗くて、玄関や廊下には物が雑然と散らばっている。

ドキドキしながらケキーの部屋に入った。


おー。
あまり女の子の部屋って感じじゃない。

服が放り込まれた段ボール箱、タンスの上のアフリカンなお面、壁に吊るされたドライハーブの束。
窓際には手作りのワイヤー人形と宿主のいない虫用ケージ。

「散らかっててごめんね!旅から帰ってきてから忙しくて片付けられてなくてさ…あ、そこ座って。」

そう言って床に転がってたTシャツを拾って段ボールに放り込む。
わ、ワイルドですね。

「今度フリーマーケットにそこの服を出すんだ。
あ、ちょうど良かった、そのタンスの上の箱を下ろしてもらっても良いかな。
そっちのも片付けたいと思ってたけど重くて危ないから下ろせずにいたんだ」
それくらいお安い御用!

下ろした箱にも服が入ってるのかと思いきや、はみ出ていたのは謎の布地だけ。
中身は乾燥ハーブ各種と本だった。

「あー、ハーブ達はここにあったのかー。
知り合いでハーブ育ててる人がたくさんいるからこうしてドライにして保存してるの。
これがマジョラム、こっちがセージ。これはえーと、なんだっけ…
多分いくつかブレンドしたものなんだけど、わかんないや」
布団の上に箱の中の小分け袋を並べていくケキー。

ちょ、布団の上に枯れ葉が散らばる(´Д` )笑

「私は紅茶よりハーブティーの方が好きなんだ。友達でブレンドしてくれる人がいるから一緒に作ったりするの。これとか作ってもらったやつだよ。あ、せっかくだからお茶淹れようか。」

ケキーが箱の中身を全部ベッドの上に出したまま飛び降りてキッチンに向かった。

な、なるほど、こうして部屋は散らかっていくわけですね。

 

キッチンもだいぶぐちゃぐちゃ。
シンク内は食器で山が出来ていて、
コンロは黒くベタベタ、
何がこびりついているのか分からないフライパン。
真っ黒な鍋。それぞれが2段ずつコンロの上で重ねられてる。

こ、このキッチンはなかなかの熟し具合ですね…

「ルームメイトが全然掃除してくれないんだよー。困っちゃうよね」
多分ケキーも同じ感じなんだろうけど(^_^;)

ケキーがどこからかヤカンを出してお湯を火にかける。
それを横目にキッチンを見渡すと、不穏なものが目に入った。
ん?なんだ?
なんで虫かごがあるの…。

ゴキかと一瞬思ったけどなんか違う。

1.2cmくらいの大きさの黒い虫がレタスの入ったケージの中を走り回ってる。
「ああ、それね。食材よ」
???
聞き間違いだよな?

「虫はタンパク質豊富で良質な栄養源なんだよ」
し、知ってるけど…

ケキーがケージの上蓋を開けておもむろに1匹、哀れな虫君をつまみ上げた。
げげっ。
一体どうやって料理するんだろ。
揚げる、炒める、甘く煮るくらいしか浮かばんけど、

え、
ちょ、
yamete…

虫君はケキーの口の中に消えた。
そうきますかー。

「ちゃんと火を通した方が美味しいけど、手間だからそのまま食べちゃうんだ。食べたい?」
え、遠慮しときます(;´Д`)

「虫嫌い?」
いやそういうわけじゃないけど!
イナゴとか食べたことあるし嫌いって程じゃないけど!
生で甲虫食わんでしょ!

「私は肉は食べたくないからこうやってプロテインをとっていかないとね。
アフリカを旅したときなんかは色々試したよ。芋虫とか…」
可愛い顔してたくましすぎる…(;´Д`)

さて、ケキーのオススメのブレンドハーブティが出来上がった。
マグにたっぷり注いで部屋に戻った。

色々な風味が混ざり合った複雑な味わい。
カモミールとパセリの味が強いな。

「日本のどこに住んでるの?前に友達と3ヶ月くらい日本国内を回ったことあるよ」
3ヶ月?!
まじで??!!
ビックリ過ぎる。

「北海道いいよね」
いいよな!大好き!

ケキーは数年前に女友達と二人で日本国内をヒッチハイクしてまわったらしい。
北海道から沖縄まで。
それじゃ多分俺より地方詳しいやん(笑)
なんか複雑…

 

旅の話でいろいろ盛り上がる。
ケキーはロンドン郊外の生まれ育ちで両親は今はここグラストンベリ―の近くに住んでるみたい。
旅が好きで年に1回以上は長期休みを取って、国外にスポットで数か月滞在してまわる旅をしている。
今は準備期間で、アフリカから帰って来たばかりだそう。

「来年の2月に南米に行く予定なんだ。現地で自転車を買って縦断するの」
ま、まじ?
攻めてんなぁ。

なんなの、今の時分、女子の方が危険地帯を旅するもんなの。

それとも危険だっていう情報ばかり一人歩きしてて実際はそんなでもないとかそういう話なのか。

いやでもモロッコで会ったミサさんとか「下手したら死ぬけど」いって言ってたし。
危険な国や地域でも行く人は行く。

単に怖がるんじゃなくて、きちんと調査して準備して、
自分の目でみて危険かどうかを判断しろっとことなんだろう。

少なくともケキーはそれをやってのけたのだ。

…ん、2月に南米?
俺も2月~3月頃に南米にたどり着く予定だ。
もしかしたら南米のどこかでまた会えるかもしれないな!

そう思ってFacebookとかやってないか尋ねたけど、SNSは何もやってないという。
あら、珍しい。

直接会って話す方が楽しいし、SNSはあまり好きではない、そうだ。
なるほどね。

色々話していくと、ケキーが意識の高い人だということが分かっていく。

「ロンドンの若者の間ではドラッグが問題になっていて、それをなんとかしたいんだけど、友達に言っても『別にそんなの普通じゃない?』って言って真剣に聞いてくれないんだ。
アンケートでティーンエージャーの半分以上が大麻を含むドラッグを経験したことがあるらしい。
そんなのおかしいよね?日本ってどうなってるの?」

うーん、ニュースでは密輸とか違法栽培がたまにニュースに上がるよな。
あと芸能人の覚せい剤問題とか。

でも身の回りではそんな話を耳にしないどころか気配も感じない。
法律でしっかり規制されてるし、教育も徹底してる印象。

だから存在するのなんてほんっとにアングラなものなんじゃないかなぁ。
漫画のうしじま君の中でくらいでしか見たことないわ。

話し込んでいるといつの間にか深夜2時近くになってしまっていた。
やば、いい加減寝ないと。

床にある雑多なものを脇に寄せてスペースを作り、寝袋を敷かせてもらう。

ケキーはベッドの上を少し片して、上着を脱いで肌着姿で布団に潜り込んだ。
ドキッとする。
む、無防備だな。
まぁ旅人らしい。

控えめに言っても、ケキーはとても可愛い。
年齢は多分同じくらい。
もしかしたら1個上くらいかも。

終始楽しく話せていて、嫌な空気はない。

まぁその逆に、残念ながらロマンチックだったりセクシーな空気感もない。
ってかそんなムード未だかつて俺は感じたことがないのだけど。

アバンチュールを期待しながらも、
勘違いしてバカな行動をして泊めてくれたご厚意を潰してはいけないという気持ち。
誠実さと臆病が入り混じって生まれた見えない蜘蛛の糸に囚われている感覚。

電気を消された。
薄いカーテン越しに差し込む薄明かりが、ぼんやりと天井の高さを教えてくれる。

「旅の中で怖いこととか危ないことってなかった?」
ケキーが暗闇から聞いてきた。

「ここまでは特に無かったよ。
ベルギーでジャンキーに絡まれたり、コソボで野犬に吠えられたりトルコの偽札掴まされたりはあったけど。
むしろケキーの方がアフリカとかで危ない経験、あったんじゃない?」

「ラッキーだったのかもしれないけど、どの国でもみんな優しかったよ。まだ1回も危険は感じたことないなぁ。」

「女の子だと狙われたりするんじゃない?」
「カウチサーフィンよく使ってるけど、今までは無かった。
プロフィールをよく読んで徹底してるからかな」
ケキーのたくましさを感じさせられる。

危険を未然に防ぐからこそ、その国その地域を安全に旅して、
良い出会いといい思い出を持ち帰れるわけだ。

…この出会いも、良い想い出にしたいよな。
…もし可能性があるのなら、きっとまた会えるしそのときに正当にアプローチをすれば良い。

沈黙が続いて、寝たかなと思った頃につぶやき声が聞こえた。

「イギリスに住んでても旅してても、世界中どこもドラッグだらけ。
日常がドラッグに侵されていない場所があるってことを聞けただけでも、幸せだよ」

俺にとってはドラッグなんてあり得ないのが当たり前だけど、
他国の当たり前と自国の当たり前は違うもんな。

是非また日本に来て欲しい。
そのときには俺がケキーを泊めてあげて、また旅の話をしよう。


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