砂漠と宇宙

2018年12月3日(月)
Morocco Hassilabied
モロッコ ハッシラビエド にて

ホステル、ワイルドネスの寝室で目を覚ました。
快適快適!

中庭の木々

ロビーに日本人らしい男の子が寝てた。
ん、なぜここに?

「今朝5時頃に着いたんで、ここで寝させてもらってました」
とのこと。

彼の名前は白石タケル君。
同じ砂漠ツアーに参加することになるそう。
やったね!また後で!

屋上から見える砂丘

ターミナル

屋上から見える影と木々

朝ごはんは商店でヨーグルトを買って済ませた。
というか手持ちのお金がこれで全部なのだ。

ハッシラビエドにはATMがない。

なのでリョータ君とメルズーガまでお金下ろしに行くことに。
メルズーガまでは一本道で3キロ程度。

遠くに砂丘がそびえ、左右は荒野。
ほんとにこの道の先に町があるのか不安になるような道を歩いた。

逆光の中の商店

何もない一本道

「こいう景色を見ると、なんか夢の中にいるようで現実味がないんですよね。」
とリョータ君が言った。

乾いた風の匂い、靴の中の砂、歩く音と遠くから響くエンジン音以外、何も聞こえない。
ほんとに、夢の中のようだ。

道の先の砂丘

1時間足らずでメルズーガの町中に入った。

その通り沿いに郵便局があった。
その外のATMでお金を下ろした。

日本から遠く離れた砂漠に囲まれた町の中の機械から、自分が稼いだお金が出て来るってのも、
原理は分かるけど魔法のようだよな。

メルズーガのカフェに寄ろうかと思ったけど、メニューを見せてもらったらちょっと値段高め。
ハッシラビエドの方が安い。

ちょうどそこに日本人の男女2人がやってきて、
ご一緒しても良いですかー、ヒマなんです、って声かけてくれた。

おーもちろん!
でもこれからハッシラビエドに戻るのだ。

女の子はチカさん、男の子はケンスケ君。
2人もハッシラビエドに戻ってから一緒にお昼ご飯を食べることに賛成してくれたので、一緒に戻ることになった。

歩いたらまた1時間くらいか、タクシーあるかな、って思ってたら、
その女の子のチカさんが、通り過ぎた車にソッコーヒッチハイクを試して一発でゲットしてしまった。

「このおじさん達が乗せてってくれるって!」
( ゚д゚)すげーな

ミニバンに4人、問題なく収納され、ターバンを巻いた、
いかにも砂漠の民といったおじさんが快く運転して運んでくれた。
ありがたいーー!!!

ターバンを巻いた運転手の後頭部

着いたよ!っておじさんがニコニコして下ろしてくれた。
えーと、アレですよね、いくら払える?みたいなやつですよね!

「じゃあね!バイバイ!」
砂煙をあげて走り去る白いバン。
…

砂漠おじさんんんんん!!!
Loveズッキュンんんんんんんん!!!

ハッシラビエドの広場に面した、ホステルに併設されたレストランでお茶しながらランチ!

甘い飲み物

カフェオレ。
お昼ご飯もみんなで。

俺はベルベルオムレツを頼んだ。
20ディルハム。

鍋のベルベルオムレツ

ちょっとしょっぱいけど、トマトが効いててうまし。

 

チカさんたちはまだ25歳前後だったかな。
旅の学生団体の話が話題に出た。

旅の学生団体ってなんじゃ?と思って詳しく聞いてみると、
以前世界一周を成し遂げた有名な旅人たちが中心になって、
世界一周を夢見る学生達を後押ししてあげる社会団体なんだそう。

タビイクとかタビッポってのが規模が大きい。

旅に関しての情報を検索すると頻繁に出て来る情報サイトTABIPPOって、
もしかしてそのタビッポと関わってるのかな。

ただその団体の運営は学生ボランティアが主体となって行われているそうで、
体育会系の部活に匹敵する過酷なノルマを課されると話していた。

旅イベント開催に向けてプレゼンや会場の準備をしたり、
そのイベントの有料チケットを何枚以上売ってこいっていうものだったり。

それをボランティアで賄っていることから、学生を労働力として搾取しているとの批判もあるんだって。
ほう。

それも由々しき問題だけど、俺が気になったのは、そもそも旅に団体必要あるのか?、って部分だ。

まだ見ぬ世界へドキドキしながら飛び出して冒険すること、
そのために情報や物資を必死に集めて、手続きを済ませて、不安と期待を胸に抱くことこそ旅の醍醐味だと思ってる。

世界一周がなんかただのサークルみたいになってて、
「旅」とは別のものになってないかな?って思った。

「そうですね。たしかに世界一周って、流行ってるし。
たぶん海外のすごい景色を見てみたいけど、自信がないとか怖いとか、
そういった層の背中を押してあげる立ち位置とか、そんな感じです」

ふむ。
実際、旅に出発するの超大変だもんな。
事前の準備がとても大変。

仕事や学校をどうするか、資金をどうするか、周りの人との関係性をどうするか。
この辺が1番ややこしい。

それに旅に出てる間の家のこと、社会保険と税金のこと。
その辺をクリアしてからようやく旅行保険、予防接種、渡航ルート、ビザ、必要な物資の準備となる。

かなりの強い決意がないと出来ないものだから、精神的にも、情報を得るという意味でも、リードしてくれる人がいるというのは心強いよな。
その需要は絶対あるから、そういった団体ができるのも頷ける。

俺の場合は、にほんブログ村の先輩たちがきっかけであり、背中を押してくれた人であり、情報を得た先でもある。

何年もいろんな人のブログを読んできて、ようやくスタートを切れた俺としては自分はまだまだヒヨコ豆みたいなものだ。

だからなのかな、さらに下の世代がまた違った形で旅をしてるっているのは、
それに対してなんだか面白さ・興味深さと、焦りや寂しさが入り混じったような、むず痒さを感じる。

2人は夜まで時間を潰して、バスでマラケシュ方面へと向かう。
みんな、良い旅をね!

みんなで写真を撮る

さて、夕方から砂漠ツアーが始まってしまうから、今のうちにやることやってしまわんと。

洗濯!
洗濯は無料と聞いていたけど、そりゃ無料だわ。
用意されていたのは洗濯機じゃなくて、桶ひとつ。

桶の中の洗濯物

これだけだとやや足りなかったから、自分のバケツも使ってジャブジャブと手洗いで洗濯をした。

マラケシュで5ディルハムで買った粉洗剤、使える使える。

約1時間かけてほとんどの持っていた服を洗い切った。
なかなか骨の折れる作業だな!

屋上で紐につるした洗濯物

続いて、伸び放題になっていたヒゲを手入れした。
といってもハサミで切るだけ。

長くなりすぎてボリュームがあったから宿の流しに流すわけにいかなくて、
こういった野外で切れる場所を探していたんだ。

中庭で、鳥がピーチクピーチクうるさく鳴いてるところでバツバツと切った。

よし、スッキリ!
リョータ君は風邪のピークでかなりしんどかったようで、少し仮眠を取ってた。

夕方16:00の砂漠への出発前に水を調達しにまた外に出た。

15:30でもうメインのお店はみんな閉まっちゃってて、メインの広場から少し離れたお店に歩かなきゃならんかった。

ベルベル人のお婆さんがお店をやってて、
なんとか手振りで水と500mlのコーラ、クッキーとチョコレートのお菓子を買った。
しめて50.5ディルハムなり。
0.5ディルハムコインなんて初めて見た!

数字がフランス語もアラビア語も伝わらなくてちょっと困ったのだけど、
そのあと宿に戻っておっちゃんに尋ねたら、あぁ、この町にいる人はみんなベルベル人だからベルベル語を話すんだよ、って教えてくれた。
ベルベル語はアラビア語とも全く違うらしい。
そりゃ伝わらんわけだ。

世界中でアラビア語を話す人がいるけど、それはコーランがアラビア語で書かれていたからだ。
どの国、地域にも元々の民族の言語があって、イスラム教を勉強するために言語を話すようになったのだと、読んだことがある。

だからアラビア語をきっちり話せると、ムスリムには尊敬されるとも。

モロッコやチュニジアは敬虔な国ではないから、
そういった意味でもベルベル語やフランス語を話す人の割合が多いんだろうな。

いよいよサハラ砂漠への出発の時間になった。

てっきりおっちゃんが案内してくれるのかなと思っていたら、
ベルベル人の伝統衣装を着た若い男の子が案内してくれるんだそうだ。

町外れの砂漠との境まで歩いたら、そこはラクダがめっちゃ沢山いる場所だった。

小石が混ざった砂

砂漠の中のテント

うおおおおラクダだあああ!!!

なかなかラクダを間近で見ることなんてないよ。

何十頭ものラクダがいる中で三頭が紐で繋がれていて、鞍も用意されていた。
鞍といっても、クッションと布を重ねたようなものだけど。

座ったラクダたち

立っていた三頭を前から順に座らせて、後ろから乗っていった。

背の高いラクダも座ってしまえば簡単にまたげる。
馬より楽かも!

最後尾のラクダにタケル君、真ん中に俺、前のやつにリョータ君が乗った。
鞍には金属のパイプのハンドルも付いてて安心感ある。

「揺れるからポケットのものはバッグに入れておいてね!」とのこと。
揺れるのか。

そして、いざ出発!

おお!
たしかに!
揺れるわ!!

前後に8の字を描くようにグワングワン来る。
ははは、こりゃウケる。

三頭のラクダ

ウケてたのは最初だけだった…

揺れから体を守るためにずっとハンドルを握りしめてるもんだから、だんだんと疲れてくる。
で、足も同じ形で固定されるから、こっちも疲れと痛みがやってくる。

景色は砂漠が続いて、一向にキャンプが見えてこない。

メインのラクダ使いの青年はベルベル人の伝統衣装を着ててカッコいいんだけど、
なぜかもう1人もっと小さい子がくっついて来てて、ラクダを引くのを手伝ったりしてる。

仕事熱心だなぁ、とは思えど、彼はグレーの地味なトレーナーなんかを着てて、バリバリ私服。
雰囲気が台無し。

年齢が中学〜高校生くらいに見えるんだけど、ギラギラした大きな金色の腕時計を付けてるし、
タバコ吸い始めるし、何歳か分からない。

リョータ君が年齢を尋ねたら19歳とのこと。
うお、そりゃ意外!!!
めっちゃ若く見えるな!!!

で、彼が先頭でタバコ吸うから煙が後ろに流れて来て超迷惑。

早くどっか行ってくんないかな、と思ってたけど、結局最後までついて来たのだった。

進みがゆっくり過ぎだなーと思ってたけど、途中、もっと長いキャラバンに追いついてしまったことから、意外と早いほうだったんだなと気づいた。

で、その大所帯を追い抜かすと思いきや、うちのラクダ引きが最後尾のその後ろにうちのラクダのロープを結びつけてしまった。

「やったー楽チンチン!」みたいな顔で羽を伸ばしてる。
うおおおい!!!
余計スピード落ちんじゃねーか!!
ケツ痛いから早く行きたいのに!!!

そこから更に10分くらい、歩いたほうが早いレベルの鈍足でジェンガを続けた。

大所帯は分割され、彼らは引き返すルート、僕らは先に進むルートに別れた。
そうか、日帰りツアーもあるもんな。

連なったラクダのキャラバンの影

別れて少しするとテントが見えて来た。

やっと解放される(;´д`)

いやぁ、昔の人は、これを何週間もかけてサハラ横断とかしてたんだろうなぁ。
さぞかし頑強なおケツをお持ちだったのでしょう。

で、砂漠ううう!!!!!

足跡の残る砂

すげええええ!

リョータ君タケル君と一緒に砂丘に走って昇っていく!
バフバフバフ!

砂丘から後ろを見返す

うおおお!おもしれー!踏んだ足がビーチのように持っていかれる!

ビーチはそれでももっと安定感あるな。

1歩進んで2歩下がる、じゃないけど、2歩進んで1歩分下がるくらいの効率の悪い足場だ。

あははははは!!!!

あははは!

あは…

ゼェゼェ…
く、苦しすぎる(´Д` )

ゆっくり歩いてても、一向に先に進まない!

これくらいの高さ、どうってことないのに!
ウケる!笑

先を行くリョータ君の足跡にうまく乗ると沈み込みが少なくて済むことに気づく。

あと前足底から少しつま先下げ気味で踏み込むのも良い。

ある程度進んだら、みんな「もうこの辺でいっか」ってなった。
これ以上上に行ってもあまり景色変わらんでしょう。

小さく見えるテントと彼の後ろ姿

夕日やら砂やらを撮りまくる!

夕日に輝く地平線

うーん面白い!

この恒河沙の砂量、世界にいくつかある砂漠の中でもサハラ砂漠じゃなきゃ見られんよな。

砂と空

手に持った砂漠の砂

ひとしきり写真を撮ったら今度はお互いを撮ろうぜと。

この景色ならブログのトップ画像に使えるいい絵がいくらでも撮れそうだぞ。

ロニーの後ろ姿

砂漠の上のロニー

リョータ君は本格的なカメラを持ってて、しかも使い慣れてるからやはりクオリティが違う!

「このボタンで撮れるんで、僕のこと撮ってもらってもいいですか?」
っていうから承諾したのに…

え、あれ?
ぴ、ピントの合わせ方が分からない(;´д`)

「レンズのとこを回すと調整できますよ!」
ふむ、ここを回す、と、
なぜかズームされていく。

ピント合わないいいいいウキイイイイ!!!

カメラのピンと一つ合わせられないおサルは大人しくタケル君に頼みました。

ソッコーで撮れてました。
お、俺こんな全時代的な人間だったのか…ozn
ウッ(´;ω;`)

ま、俺は撮ってもらう方でいいや♪
ポジティブポジティブ♫

沈む夕日

太陽の後ろ姿を見送る。
砂漠の向こうの、町の向こうの、山のまた向こうへ。

アメリカ大陸ではみんながきっと昼食を食べ、
ニュージランドあたりではようやくやって来た朝日を迎えているのだろう。

明日また会おうな。

砂に手を突く

砂の手形

砂漠の陰影

日が暮れると一気に寒くなって来た。

砂丘を駆け下りてテントに戻った。
モコモコしていた靴を逆さにすると大量の砂が流れ出た。
叩くと無限に出てくる。

ハッシラビエドに帰るまではしばらくこの調子だろう。

トレーのお茶のポット

「夕飯ができたよ。そっちのテントに入って」
と、担当のベルベル青年が嬉しいお知らせを告げてくれた。

やっほーい!

テント内で休憩

食卓

夕飯は巨大なタジン鍋!
鶏肉と野菜がたっぷり入ってる。
うひゃーうまそー!(^o^)

3人で熱々の具を取り分ける。

タジンは独特な陶製の鍋で蒸し煮にする料理だ。
だから肉も野菜もジューシーに仕上がる。
クタクタになった野菜、しっとりとした鶏胸肉。
味付けは軽いスパイスの香りと塩程度でシンプルだ。

その分、具材の質に左右される気がする。

「これ、3人分にしては多いよね!」と言うくらいにたっぷりと作ってくれたから腹一杯食べられた。
そこにフルーツも出てくる。

ベルベル人、伝統のご馳走。
美味しくいただけました!完食!

ベルベル語 でありがとうは、Tannomielt。
タンノミェルト。
ちなみにハローはAzul (アズール)。

最低でもこの2つの言葉は覚えておきたいな!
美味しい料理にタンノミェルト!!

 

食べ終えると、こっちについて来て、と言われてテントの外へ出た。
暗い闇の中を、青年の足音を追うようにして砂丘を登る。

見失わない、というか聞き失わないようについて行って、たどり着いたのは隣のテントサイトだった。

夕刻に砂丘の上から見えた、木が生えててキャンプファイアをしていた大きなテントサイト。

そこには大勢の欧米人がキャンプファイア周りに座ったりしてダベっている。

お、これか、ベルベル人の伝統音楽が聞けるショーというのは!
ほかのテントサイトからも続々と人が集まってくる。

驚いたのはみんなお酒飲んでること。
ワインボトルやビール缶がこれでもかってくらいあちこちにある。

ベルベル人の年長の青年も何缶も開けたようで、けっこうへべれけ状態で笑ってる。
ベロベロ人め!

ベルベル人はムスリムと比べて緩いなぁ。

モロッコではビールが高いと聞いていたけど、安く買える場所を知っているのかな。

それぞれのお客さんの担当のベルベル人たちがみんな頭にターバンを巻いていく。
すげえ、なかなか複雑な巻き方なんだな。
で、適当に練習する感じでドラムを叩き始めた。

場所を変えたり向き変えたりして調整。

焚火のそばのベルベル人

ヘッドの音を変えるためか、キャンプファイアの炎で炙ったりもしていて興味深い。
暖まると音って低くなるんだっけ、と思ってたら、逆に高くなってた。
そっか、ヘッドが乾燥して固くなるから音も高くなるんだな。

空気も膨張するからさらに張りが強くなるのかもしれない。
シンプルな同じリズムを2人が合わせている。

…

そのまま5分以上同じのを叩き続けて、一旦おしまい。
ん?笑
これはパフォーマンスなのかな?
練習なのかな?

次は別のリズム

太鼓をたたく人たち

ここにみんな入ってくるのか!
と、思いきや。

そのまま2人でそのリズムをぴったり合わせてまた5分くらい。

…
おしまい。

派手さのない演奏だなぁ…

今度はみんなで一箇所に集まって、また別のリズムをみんなで合わせた。

ベルベル人の太鼓ショー

そこに緩い感じで3人ほどが横について、不思議な踊りを合わせながら、
ひょうたん型の金属の板を重ねたパーカッションでカショカショと器用にリズムを重ねた。

そこにエオエオエオ〜と、何かの歌を乗せる。

シンプルなリズム、フレーズをずっと同じ重ねるのにはトランス効果がある。
メロディとかハーモニーなんてものはなくて、ほぼリズムだけ。
とても原始的な音楽だ。

みんなで並ぶ

俺の取った写真が暗すぎて見えないのでリョータ君のやつ

ショーをするベルベル人たち

今のベルベル人は観光のために働いているけれど、
昔は野菜や家畜を生産し、運搬して暮らしていたのだろう。

砂漠をラクダを引いて移動し、砂嵐を避けて、タジンを食べて、みんなで集まってドラムを叩く。
娯楽も少ない、食材も調味料も少ない。人も少ない。

色んなものに触れることがないかわりに、ひとつひとつに集中していたのだと想像できる。
シンプルライフって単語は、こういう生活を指す言葉なのかもしれないな。

特にエンディングとかなくて、
1人2人と疲れたメンバーが演奏をやめて、最後2人くらいも、ふー疲れたーみたいな雰囲気で手を止めた。
それをくつろぎながら見たり見ていなかったりしてる観客たち。
特になんの説明もなしにおしまい。

締まりのないショーだな…

2人くらいの若いベルベル人たちは、裏手の方で引き続き太鼓を叩いて遊んでいるみたいで音が聞こえてくる。

年長の酔っ払い青年は、ベラルーシ人旅行者たちの持ってるワインを俺にも分けてくれーって催促して断られてる。

スペイン人グループの人たちとはスペイン語で話しながら盛り上がってて、ウイスキーみたいなのを分けてもらってた。
ヒドイ飲兵衛だ笑

にしても、よく色々な言語を話せるもんだなぁ。
ベルベル語、イスラム語、フランス語、それにスペイン語を話すわけか。

日本語でも、「よーこそ!ありがーと!私は、女の子、好きです。彼はクルクルパーです」みたいな簡単なフレーズを話せてる。
すげ。

きっと毎日外国人観光客を相手にしてるから覚えるんだろうなぁ。

 

ほどほどのところでテントに戻ることになった。

こっちのベルベル青年が引き続きドラムを叩いていたから、これ幸いと俺も教えてもらって叩いてみた。
うわ、シンプルなフレーズなのに手順が少しややこしい。

ドコタコタコと同じリズムを繰り返した。

テントではお茶を用意してくれていた。
甘い、ミントの味のするお茶。
うはー、あったまるー!
茶菓子に買ったお菓子でも出そうかな…

「ヘイ!君たちちょっと来てくれ!」
ん、なんだなんだ?

テントサイトから外に出ると、暗闇の中でさっきの酔っ払い青年がバギーにまたがっていた。

「おー!こっちこっち!後ろ押して!」
??
押すの?
乗せてくれるとかじゃなくて?
説明くらいしてくれや。

「あっちの方にみんなで押すんだ!」
はぁ。

つまり砂にハマっちゃったってわけだな。
せーのっ!!!!
5人がかりでバギーを押す!
ぐおおおおおお!!!!

10mくらい進んで力尽きて止まる。
砂漠をバギー押すとかなんの拷問だよ!

「よーしゃああもう一回だ!ワンツースリー!!!」
ぬるぽおおおおおおお!!!!

げホァっ!!げはっ!!
ゼイゼイ…
ゲホゲホオォ!

治りかけてた風邪の咳がまた出て来たわ!
キッツ!!
タイヤも足も砂にとられて全然すすまねぇ!!

3度目でようやく砂丘の頂点まで行った。
「よーし!もう一回だ!今度は乗るから、4人で後ろから頼むぜ!」
せーのっ!!!!

ぐんっと下に向けて押し出す!!!
むーーーーんんん…

そのまま20mくらい先の砂丘の底まで降りて行って、
そのまま、
止まった…
何してんの?(キレ気味)

じゃ、これでバイバイ!って3人で立ち去ろうとしたら超必死に止められた。
「待て!もう一回だ!」
もう一回だじゃねーよ!

せっかく上りの砂から出られたのにただ滑り台遊びしてんじゃないよ!!

「ほら早く!もっかい上まで押し上げるんだ。
今度は手を離すんじゃなくて、エンジンがかかるまでずっと押すんだぞ!分かったか?」
なんで始終高圧的なんだよコイツ。

ワンツースリー!

とおりゃああああああああああ!!
せりゃあああああああああああ!!!
なまあしいいいいいいいいい!!!!

げひゃっ
げひょっ
ア”ア”ッ
じぬ”ぅ!
息がッ
できんッ
ゲボォ

「ホレ、さっさと下りるぞ!ワンツースリー!」

くそぼけええええええああああああ!!!!!!!

グゥゥゥン…グォン!グォン!ブオオオオオオ!!
エンジンかかったああああァァァ…

そのまま砂丘を下り、上りきり、夜の砂漠の闇の中に走り去って行った。
…ひ、ひでぶ…

「だ、大丈夫かっすか、ロニーさん…」

む、ムリ…
オ、オエエ…
息できん…

心臓がバクバクして吐き気までする…

ふらふらヨタヨタとテントまで必死で戻って行った。

うおおえええ
気分悪いいいい

そのままテントサイトの中庭に仰向けに倒れこんだ。
ゼハッゼハゥ

やっべぇ
絶対今血圧と心拍数がとんでもないことになってる。

ああぁ、運動不足…
情けねぇ…
旅終わったらすぐジョギング再開しよう…

 

10分くらいそのまま倒れてたらようやく心臓が落ち着いて気分が回復して来た。
あぶねぇ…死にかけた…

旅中にテロや自然災害に巻き込まれたとかマラリアかかったならまだ分かるけど、
砂漠で無意味にバギー押して脳出血とか心臓発作で死んだらダサすぎる…

仰向けで寝ることには、メリットもあった。
星がヤバイ。

星がヤバイいいいい!!!

信じらんないくらいの星の数で宇宙が埋め尽くされてる。

宇宙は無限じゃないけど、無限って言いたくなるくらいに埋め尽くされてる。
オリオンもデッカいし、ベルトの下の縦に並んだ星までハッキリと見える。
火星も金星も天の河も、見間違えようがないくらい。

普通に生活しているときでも、この那由多の星々は存在しているのに、まったく意識に登ることはない。
それがこの存在感。
マジビビる。

去年八丈島に帰省したときの星空も素晴らしかったけど、全然劣らない。
シチュエーションを加味すればダントツ!

俺たち人類はこの大宇宙の中の、ほんの一粒の星の、その歴史のほんの一端を生きているにすぎない。

同じように考えている文明が、さながら日本から海を越えた海外にも人が住んでいるように、
宇宙の向こう側で星空をきっと見ている。
地球は隅々まで人間に探検され尽くした。

次は宇宙だ。

そう確信を得るには十分過ぎるほどの、リアルが、そこにあった。
ミュー粒子を全身に受け止めながらロニーは息絶えたのだった。


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