旅の運

2019年3月11日(月)
Mexico Mérida メキシコ メリダ にて

宿の壁

8:00過ぎに起きて部屋の外で気功とストレッチ、少林の基礎練をちょっとだけ。

胃腸の痛みはないけど、完全回復にはまだ至ってない気がする。
今日も暑くなりそうです。

テーブルに並ぶ宿の朝食

宿についてる朝ごはんは、フレッシュフルーツ、トースト、シリアル、砂糖入りプレーンヨーグルト。
あと砂糖入りジュースとコーヒー、牛乳だ。

ゲンさんと一緒に食べた。

 

ゲンさんは既にメキシコに1年半ほどいる。旅してるっていうよりもはや住んでる域だ。
田舎も回ってるし友達も多いから、メキシコの治安に関する情報量が凄まじい。
その沢山いる友達ってのがまた、スラム出身や低所得層のジャンキーばかり。

マフィアとの抗争やらメキシコの麻薬カルテルの分布やら強盗事件の経験やら、映画やドラマとしか思えないエピソードがわんさか出てくる。

「マジで、メキシコほんとにあっぶねーよ。超危険。いつも危険センサーを立ててないと即死亡みたいな。こっちは安全だけど、シティから北部はヤベー。テピートには良く買い物に行くけど、安いからな、あそこは歩いてると急に殴られたりするもん。なんもなしに、急にガンッみたいな。マジ気ィ抜けねーよ。」

テピート(Tepito)。
地図を確認すると、初日に行った図書館の、2つ隣の地下鉄駅周辺地区だ。
となりのガリバルディってところも危険らしい。

「あ、そういえば図書館の前に行った時、やたら沢山の機動隊がいましたね。訓練かなと思ったんですけど。」

「へー。だいたい人が死ぬ事件が起きると、しばらくその辺は厳重体制になんだよ。絶対そこ数日以内に人が死んでるぜ。」

ウォイ!マジかよ(´Д` )おっかねーな!

「俺の友達がスラムに住んでるヤツらばっかだからよ。会いに行くのも大変なんだけど、楽しいんだよな。
この道は通っていいけどこっちはダメみたいな。まっすぐ行ったら死ぬ、みたいな。
やべーよな。パーティの時とかみんなクサやってハナやってカミやって、盛り上がってんだよ。
酔っ払ってラリってるときに車乗ってスラムとかヤベーとこ走んだけど、運転手もワザとグウォオン!って急カーブで振ったりすっから、ウェーイって倒れたりすんだけど、またそれがウケるんだよ」

なにその世界(´Д` )
ワカリマセン(´Д` )

「メキシコシティいたんだろ?みんなそんなんじゃね?」

「い、いや、僕のホストさん達は違いましたね…」

「へ〜?まじか。」

 

ゲンさんがプールに入るらしい。
俺は買ってあるカップ麺でも消化してからプール入ろうかな。

テーブルの上のカップヌードルとコーヒー

プールサイドでカップヌードル。
ラグジュアリーなのかビンボーなのか分からない組み合わせ。

安いだけあってか、日本で食べるよりマズイ。

 

気温が昨日よりも暑いから冷たいプールの水が気持ちいい!

 

一緒にしばらく涼んでシャワーを浴びて、昼ごはんを食べに出かけることになった。
昨日見かけた、中央公園の角にある安いお店。

道中で勝ったオレンジ

道中で勝った柑橘スライス盛り合わせ袋

お店に着いた。

タコスのような具材を、硬めのイングリッシュマフィンぽい生地に挟んだ料理だ。
色々具材を選べて、1個あたり15ペソ。
この辺じゃダントツ安い。

ユカタン料理のCocinita Pibilとなんとかって料理を1個ずつ買ってみた。
うん、煮込まれた肉に深みがあってうまい。

2段重ねのマフィンサンドのような料理

「うまっ!うめぇ!いやー、ここ当たりだな!安いし美味いし!
メリダいいなー!メキシコあちこち行ったけど、メリダ俺すげー好きだー。俺もう1個頼も。」

ゲンさんおかわり(^_^)

 

腹ごしらえをしたら2人でブラブラ歩いた。
特に面白いモノはないな〜、って歩いてたら、あるおみやげ屋さんで異様なものをみた。

買わなかったから写真も撮れなかったんだけど、カミキリムシみたいな生きた虫になんと、
ビーズとか金属チェーンで飾り付けされいてる。

「なんダァこりゃ?!」
目を疑った。

金ピカのミニチェーンと色とりどりのビーズが虫の背中にくっついてる。
虫がノロノロと動いて、宝石のようにデコレーションされた背中が土の上を滑る。

「あっはははは!!すげーぜメキシコ!さすが発想力がちげーよ!日本もこの発想力を持たなきゃダメだよな!あははは!」

この発想力ってどうなの(´Д` )

これなんですか?って店員のおばさんに尋ねたら、「スカラバホス」とのこと。

スカラベ?
うーん、謎な文化だ。誰が買うのだろう…。

居心地の良さそうなテラス

しばらく歩き回って、サークルKで見つけた地ビールを買って宿に戻った。

メキシコの缶ビール

早速カンパーイ!

ビールを飲みながらお互いの家族とか学校の話をした。

「ウチの学校、漁師町だからよ、卒業しても家を継ぐって決まっちゃってんだよ。
だからみんな遊びに来てるだけなんだよ。
他のやつなら万引きとか簡単な問題起こしても、最初は校長に呼び出されて訓告受けるだけなんたけどさ、ヤクザの息子とかは即退学なんだぜ。どうせ家を継ぐって決まってっから。
本当に大きな問題を起こされる前に退学にさせちまうみたいな。
あいつ元気かなー。最初はヤクザやってたけど、今の時代暴対法のせいでやっていけねーもんな。あいつはそのあと他の仕事に転職したらしい」

ま、まぁいい事ですよね。

 

宿のビリヤード台が空いてたからやってみた。2人でビール飲みながら適当に玉打ち。
あ、俺これ初めてのビリヤード体験だわ。結構球が重いんだな。

「昔よくやったなー。もう長い間やってねーけど。楽しいよな。」

ルールは色々あるみたい。
2人ともよく知らないので、適当に打って適当に球をポケットに落とした。

会話の中で、どうも気になる部分があった。

それは、悪徳警官の話題。

「さすがに長く住んでっと、警察へワイロ払うのも当たり前になってくるよな。携帯とか時計持ってると持っていかれっから、最低限の現金だけ持って歩くようにしなきゃなんねーんだ。テピートとかだと、アイツら地元のワルどもとヨウ、元気か?みたいに、友達みてーに接してんだぜ。警察も治安の悪いとこ出身だから、もう仲間みてーなもんなんだ。」

なんだそれ。悪をさばいて市民を助けるのが警官だろ?

「メキシコシティの警察はクソだから。そんな日本の理屈はツーヨーしねーよ。
ちょっとでも目をつけられてインネンつけられたら、カネねーっすよー(笑)カンベンしてくださいよーってさっさと現金でワイロ渡すのがルールなんだぜ。ゴネてモタモタしてっと仲間呼ばれんだ。そうすると警察の頭数が増えるから、ワイロの額も上がっちまう。そうなる前にさっさと済ませるのがベストだ」

いやいや、まず警官に賄賂とかありえんでしゃ。
そんな当たり前みたいに金払ってたら、悪徳警官が付け上がって治安悪くなるだけじゃん。
罰金とか言うなら、その根拠となる罪状と金額を確認しないことには金なんか払っちゃダメだよ。

「いや、オフィスに連れて行かれると、もっと額が上がるんだよ。保釈金だと何十マンになる。そうなる前に少ない金額で手を打った方がイんだよ。」

「そもそもイチャモンであったら、そんな金額にならないじゃないですか?証拠があるわけでもなし。」

「メキシコはみんな証人制なんだよ。だから警察が友達の一般人を呼んで証言させんだ。『私が見ました。コイツが確かにやってました』って。それでハイ罪成立、いくらでもカネを払わせられる」

そんなばかな!
証人を重視するなら、なおさらその証人の適性を確認するはずでしょ?
警察とも被告人とも全く関係性のない第三者でないと効果が無いのが常だよな。

「ここはメキシコだから。ンな理屈ツーヨーしねーの。アイツらみんなクズだから。
俺の知り合いの、オアハカで日本人宿を昔やってたっていう日本人夫婦も、被害にあったんだ。長年メキシコに住んでた人でもだぜ?
メキシコシティの空港のすぐ周りはスラムなんだけど、そこを車で運転してたらインネン付けられたんだよ。なんも悪いことしてないのに。
それでも、30マンの罰金だぜ。アイツら、声かけたのが日本人だとニヤーッてイヤな笑顔すんだよ。ハポネスはカネ持ってるって知ってるからな。」

なんだそのムナクソ悪い話。

一体、法とか正義とかどうなってんだよこの国は。
警察は市民の味方だろ?公益の下僕だろ?
その警察が当たり前のように権力を乱用して金儲けするとか、許されざることだよ。

断固としてそんなん認めちゃならないこと。

ゲンさんいわく、ラテンアメリカはみんなそうだよ、と。
うーん、どうすればそのクソな状況を正せる?

世界には、人類には、もっと目を向けるべき大事な問題がたくさんあるのに。
そんなフザケタ状況が、改善すらされずに蔓延ってるなんて。

ハラワタが煮え繰り返るようだ。

 

これから俺は、治安的にもっと危険な中南米に下っていく。
なのに、頼るべき警察すら、敵となってしまうなんて。

俺は本当に行っていいのか?

現実を見たい。
でも俺は、現実的に考えればそんな金銭や命のリスクに賭けるほどの余裕なんてない。

いや、でもそれで危険な国々をただ飛ばして、果たして世界一周と呼べるか?
旅をしたと言えるか?

困難な局面をも乗り越えてこそ、自分の勝ち経験となって、自力を高めるのではないのか?

しかし、俺の将来を考えた時、「必然の成功」をたどって行くのがベスト。

運とか偶然とか、そんなものに頼って手に入れた成功に価値などない。
再現性がないから、自分の力として蓄積されないからだ。

「ラテンアメリカを生き抜くので1番大事なのは運。運だ。
その次に危機を察知するセンサー。
この2つを持たないヤツは、どんなにマジメだろーが生きていけねぇ。
大学で世界のスラムについて調べてるって立派なヤツに会ったけどソイツ、メキシコに来てすぐに強盗にあって金と携帯を盗られたんだ。
それでも旅を続けたけど、ストレスのせいでオアハカで胃潰瘍になってな。
最後には目の前でマフィア抗争に遭遇して、結局途中で帰国したよ。この世界では運が1番重要。」

運。

運良く生き残る。
運が悪いせいで死ぬ。

そんな環境を自分で選びとるのは、俺がやることか?

胸がモヤモヤする。
このまま運頼みの旅でラテンアメリカの中枢に進んでいくのは、俺の目的に合っているのか。
見ないフリでいいのか。

俺の旅、俺の生き方、俺の目標。

俺がしたいこと。

ああああ!!

分からない。分からない。
もう少しだけ時間が必要だ。

 

明日、キューバに飛ぶ。


以下、夕飯を食べに外に出たときにやっていたイベントの様子。

広場に列になって並ぶ男女

リボンをメリーゴーランドのように持って集まる人

頭に皿を乗せた男女

鳥の格好をした踊り子

オニオンたっぷりの齧られたホットドッグ

宿まで買って帰った夕飯のホットドッグ。オニオンたっぷりでジューシー。

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